小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
田村屋本舗
田村屋本舗
novelistID. 61089
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

霊感少女

INDEX|10ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

告発





あの日から

多恵の[生き霊]の
陰が 弱い


早くしなければ
[生き霊]の本体である
多恵の生命体にも
影響が でる


早くしなければ


相楽は 強行突破に
踏み切った


バイトが 休みで
部屋で 転がる雅人に


「寮に連れてって」


仁王立ちの相楽が
見下ろしている


「…はい?」


見上げた雅人が
相楽の形相に
一瞬 たじろぐ


「菊地さんの所へ
連れてけと言ってるの」


体を捻り
起き上がった雅人が
怯えながら


「…知らないぞ」


鬼の様な顔の相楽


「だから?」

「……」

「調べなさいよ!!」


雷を 落とした


慌てて携帯電話を
握りしめ
仲間に連絡を取り始め



数分後

雅人の携帯電話が 鳴る


菊地 本人からの
電話だった



菊地は 電話口から
外で 会おうと
提案して来たが

頑として
横で首を振る
無言の威圧を
相楽に 送られ


強行を強いられた雅人は 訳のわからない
理屈を こねまくり


必死な思いで
何とか
菊地の寮へ 訪れる
切符を 取り付けた



「行くわよ」



雅人は 戦闘体制で
菊地の寮へ 乗り込む
相楽に 圧倒されたまま


「はい」


返事するしかなかった



菊地の寮は
バイト先の運輸から
それほど
離れては いなかった


白い外壁の
綺麗な建物だが
壁面に ひび割れと
雨染みが 見える


築20年程
経っているかもしれない


独身寮と言うだけあり
間取りは 1DKなのか


両隣とのドアの感覚も
狭かった



外から 眺めると
カーテンのない
空室が 目立つ



入居者は あまり
居ないらしい



チャイムを 鳴らすと
返事が しながら
菊地が ドアを開けた


入居して
一週間と 数日


汚れ様もない部屋

壁の横に
布団一式が
畳まれ置いてある以外


まだ 家具は
何も なかった


流し台に 歯ブラシと
歯磨き粉が
無造作に 置いてある


何もかも
捨てて


この土地に
来たのかもしれない




雅人の後ろから
付いて来た相楽に


若干 顔を引き攣らせ


相楽の顔を見ずに


「何もないけど」


菊地は わざわざ
声を 掛けてきた


相楽は 菊地にとって
迷惑な存在でしかない



それは
同年代の相楽が
[多恵]と
重なるからなのだろう


弱々しい
多恵の生き霊が


菊地の部屋の隅に
座り込むのを 見て



相楽は 胸を
撫で下ろした



相楽が 菊地の寮に
こだわったのには
理由が あった



多恵の居場所の
確保だった



ファミレスでは
多恵に 逃げられたので


部屋に入る前に
寮の周りを
見て回ったのは


結界を 張る為だった



案の定
訪問した時に
声を掛けた後は


相楽を 除外した状態で
雅人と菊地の
会話が 続く


うずくまる多恵の
生き霊に


相楽は 心を
決めた



早々と 告発に
踏み切ったのだ



雅人と 笑いながら
話しを している菊地に


「【多恵】を
知っていますね?」


相楽は 視線を外さず
菊地の顔を見ていた


菊地の口元に
笑みが 消え


ゆっくりと
相楽の顔を見た


恐ろしい程
瞳の奥が 暗く
鋭い眼光の菊地


「知っていますね?」


相楽の声に
何かを 察知した雅人が
口を閉ざした


押し黙る菊地の額に
汗が 滲み出る


「【小坂 多恵】」


はっきりとした
口調で 名前を告げると

菊地の体が
ビクンと動いた



部屋の隅に
座り込んでいた
生き霊が 動いた


握り絞めた拳が
菊地の膝を上で
小刻みに震え出す


「多恵を知っていますね」

容赦なく
浴びせ掛ける
相楽の声が


押し黙る菊地の
唇を 開封させた


菊地の隣に
佇む多恵の生き霊に
見下ろされながら


「……多恵」


菊地から声が
漏れ

多恵の生き霊が
菊地に 覆い被さった





掠れる程
小さいな声で

「…はい」

返事をする多恵





菊地の耳に
届いたのだろうか


多恵に 抱きつかれた
菊地が 溢れ出す涙を
怒涛の様に流した




「知っていますね
貴方が 愛した女性を」



菊地の泣き震える肩を
必死で 抱き締める
多恵が




相楽に向かい
ゆっくりと
頷く




相楽は 息を飲み
呼吸を 整え



「多恵さん 退院されましたよ」



菊地の顔が 上がり
相楽の顔を 見た



相楽は 優しく微笑み


「彼女 結婚するんです」




「安心して 菊地さんも
幸せになって下さいね」 


相楽は 菊地に
多恵から頼まれた言葉を
伝えた



呪縛から解き放たれ
泣き崩れる菊地の背中に
頬を寄せた 多恵が
微笑みながら


姿を 消した




部屋の中で
胡座をかき
黙って見ていた
雅人は



突然
目の前に座る菊地が
泣き崩れ


正直
面食らっていた



三十路男を 泣かせた
相楽が 満足そうに
笑っている姿を見て

雅人は ギョッとする




一瞬 AVビデオで 見た

鞭を 振り落とし
高笑いするSM女王と

相楽の姿が
重なったからだ




泣き崩れる菊地を置いて


「帰るわよ」


立ち上がる相楽に

雅人は 慌てて
立ち上がった




床に 顔を伏せて泣く
菊地に

顔の前で 片手を立てて

「悪ぃな 帰っから」


雅人は 薄情者を
決め込んだ




珍しく
相楽の機嫌が
良さそうに
見えたからだった


作品名:霊感少女 作家名:田村屋本舗