霊感少女 第一章
血まみれ事件
僕の彼女は霊感がある
そんな彼女との出会いは
やはり普通では なかった
高校1年の僕
名前は 田村雅人
ごく普通の男子だ
あれは高校の帰り道
友人と本屋に立ち寄った
本屋の場所は 二本の道路が交差するYの字交差点の三角地にあった
右側は 歴史ある県立高校の石垣があり 鬱蒼と生い茂る木々が 本屋の陽射しを遮っている
そして左側は 薬局
薬局沿いの道をくだると
葬儀場があり よく霊柩車を見かけた
そんな本屋の三角駐輪場で自転車に跨がり 友人がレジで会計している姿を眺めていると 真横から直角に 自転車が 体当たりしてきた
不意打ちをくらい
ノーブレーキの勢いに押され 自転車に跨がったまま横転し 反対側の道路に押し倒された
自転車のハンドルに寄り掛かっていた為 ぶつかった弾みで ハンドルの金具にアゴを強打し
倒れながら 腕を地面に擦りつけ 自転車の下敷きになった足のカカトに ペダルが容赦なく減り込んだ
最悪だ…
自転車の下で倒れ伏していると ぶっ倒した犯人が 自転車に跨がったまま
「よっ!」
と 笑っていた
犯人の正体は 幼馴染みの峰岸
一応 性別は女だ
怒りも痛みも脱力に変わり 怒鳴る気力もなく
「よっ…じゃねぇだろ」
ツッコミを入れていると
背後から ブレーキ音が響き 後頭部の横を 自動車の熱したタイヤが 通り過ぎた
殺される…
峰岸と居ると ろくな事がないのだ
本屋から 購入した雑誌を片手に出て来た友人[津野]が ガムを噛みながら 無言で自転車を起こし
「誰?知り合い?」
と 聞いてきた。
とにかくアチコチが痛い
なんとか体を起こして座ったまま
「幼馴染みの峰岸」
と紹介すると 互いに軽く会釈した。
「こっちは?」
こっち?
峰岸の真横に 髪の長い女が 直視している。
「相楽 望です」
前髪を眉毛が隠れる位置に真っ直ぐ切り揃え 色白で細身の女が 瞬きもせずに呟いた。
影の薄い女だが 威圧感がある。
津野と峰岸は 似た者同士気が合うのか 怪我人を前にして マックに行く相談をしていた。
「…あっ」
相楽 望の腕が ゆっくり上がり僕の顔を指差した。
アゴに手を当てると ヌルっとした感触がある。
ハンドルの中央にある金具に打ち付けた時に アゴが切れたらしい
ポタポタと滴る玉状の血が シャツを 赤く染め初めていた。
ハンカチなど 持っていない 勿論 ちり紙もないが 何かないかと 慌てて空の鞄を拾っていると 目線の端で ニヤリと笑う相楽の顔が 見えた。
(こ…怖えぇ)
勘違いであって欲しいと 恐る恐る相楽の方を見ると ジリジリとにじり寄り 目の前に座り込んだ相楽が
満面な笑顔で
「好きかも」
と 突拍子もない言葉を口にする
(かもって なんだよ)
と言う訳で
突然の相楽の告白は 血まみれのシャツを着ていた。
それが 彼女との出会いだ