われらの! ライダー!(第四部)
1.メリークリスマス! ライダー!
(2016.12 お題:『魔法』 魔法を拡大解釈して、陰陽師登場です、今後収拾がつくのか不安ですw 戦いの舞台もあの『魔法の王国』に設定しています)
『メリークリスマス! ライダー!』
クリスマス・シーズン、ライダーたちはそれぞれ、子供たちに勇気をプレゼントするために、様々な施設を訪れている。
ライダーは大きな病院の小児病棟に。
「わあ、ライダーだ、ライダーが来てくれた」
「僕もライダーみたいに強くなりたいな、でも、病気がなかなか治らないんだ……」
「私もね、ショッカーに捕まって改造手術されてしまった体なんだよ、でも、運よく脱出することが出来て、今はショッカーと戦っている、でもね、いつかショッカーを斃して平和を取り戻せたら、私も普通の人間に戻りたいと思っている。 世の中には医学や化学、遺伝子工学の研究をしてくれてる博士もたくさん居るんだ、希望をなくしちゃいけないよ」
ライダーマンは手足が不自由な子が通う養護学校に。
「私はね、ショッカーから逃げ出すときにこの右手を失ったんだ、ほら、この通り……でもね、私は左手を使うことを訓練して、いまではすっかり左利きさ、それに、この右手には色々なアタッチメントをつけ替えてショッカーとの戦いに役立てているんだ、失ったものを悔やんでばかりではいけないよ、何をするべきなのか、何が出来るのかを考える、前へ進むには必要なことなんだよ」
マッスルが訪問しているのは少年院だ。
「おっす! 悪ガキ共! 実を言うとな、俺も刑務所にはずいぶん厄介になってるんだ、前科六犯、相当なワルだろ? ショッカーの戦闘員としてライダーと戦ったこともある、でもな、戦いに敗れた俺にライダーは更生のチャンスをくれたんだ、で、心を入れ替えて、今じゃライダー達と共に戦ってる……真っ当に生きるって、清々しいものだぜ、日々が充実してる、お前らも罪を償ったら、自分に何が出来るのか、何をしたら良いのかを真剣に考えて欲しいもんだな!」
そしてレディ9が訪れているのは、死別や虐待、育児放棄などで親を失った子供たちが共同生活を送っている児童養護施設だ。
「わぁ! レディ9だ!」
「すっげ~!」
「かっこいいわぁ!」
正義のヒロイン、女性であるレディ9は、男の子だけでなく、女の子にとっても憧れの的だ。
「握手? もちろん良いわよ、じゃ、並んでくれる?」
「はいはい、レディ9は一人しか居ないのよ、ちゃんと一列に並んでね」
子供たちを並ばせているのは晴子。
実は晴子も八年前、十五歳の時に両親を失っている、ショッカーの怪人に襲われたのだ。
晴子自身も危ない所をライダーたちに救われ、しばらく立花レーシングで暮らしていた。
養護施設の職員になってからも、立花レーシングには時々顔を出していて、同じ女性で年齢が近い志のぶとは姉妹のように仲が良い。
「はい、一人に一袋づつ、クッキーのプレゼントよ」
「わぁ、これ手作りクッキーだ! レディ9が焼いたの?」
「そうよ」
「強いだけじゃなくて、お菓子作りも上手なのね! 優しくて綺麗だし……あたし、大きくなったらレディ9みたいになりたい!」
「うふふ……とっても光栄よ、ありがとう」
しかし、楽しく、穏やかに流れる時間は緊急連絡で止まってしまう。
「はい……ショッカーがディズニーランドに? 魔術を操る怪人ですか? わかりました、現場に急行します……みんな、ショッカーが現れて暴れているの、私は行かなくちゃならないわ、みんなともっと楽しく過ごしたかったけど、ごめんね、また必ず来るわね」
そう言い残して養護施設を後にしようとしたレディ9だが、晴子に引き止められた。
「魔術を操る怪人って、もしや、アシャード・ドゥーマン?」
「そうよ、あなた、知ってるの?」
「両親の仇なの」
「そうだったの……」
「あたしも連れて行って!」
「それはダメ、気持はわかるけど危険だわ」
「ううん、仇だからって言ってるんじゃないの、ドゥーマンが相手なら、あたしは力になれる……ううん、その戦いにはきっとあたしが必要になるわ!」
レディ9は訝しげに晴子の顔を見るが、その目に強い意志の光を感じて頷いた。
「わかったわ、行きましょう!」
つい先日完成したばかりの、レディ9専用マシン、On×3(オンミツ)号。
一見すると、映画『ローマの休日』でO・ヘップバーンとG・ペックが二人乗りしていたシーンで有名な、イタリア・ベスパ社製のおシャレなスクーターにしか見えない。
しかし、その中身は立花レーシングの技術力が詰まったスーパーマシンなのだ。
「飛ばすわよ! しっかり掴まってて!」
スロットル全開! On×3号は轟音を置き去りにするかの様な鋭い加速で走り去った……。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「どこ? どこで戦ってるの?」
瞬く間にディズニーランドに到着したレディ9と晴子だが、パークは逃げ惑う無数のゲストで混乱していた。
レディ9の地獄耳もこの騒ぎの中では役に立たない……そんな時に役立つのは……。
「ビッグサンダー・マウンテンよ! 急ぎましょう!」
志のぶと剛の間でだけ交信可能な、『愛のテレパシー』はどんな混乱の中でも互いを見失うことはないのだ。
「あなた!」
「志のぶ! 来るな! 危険だ! こいつ、妙な魔術を使いやがる! うわっ!」
見ている前でマッスルが吹っ飛ばされた。
「コチカメ波よ!」
晴子がそう叫んだ。
「コチカメ波?」
「気功波の一種、カメハメ波より強力なの!」
「気功? そんなもので三人ライダーを寄せ付けないことが出来るって言うの?」
「アシャード・ドゥーマンは陰陽師なの!」
「陰陽師? 日本人には見えないけど……」
ドゥーマンは黒い肌に彫りの深い、かなり濃い顔立ち、そして元は白かったのだろうが、今ではねずみ色になってしまっているぼろぼろの僧衣を纏った老人にしか見えない。
「蘆屋道満の子孫がインドに渡って、綿々と陰陽道を受け継いで来た、その末裔がドゥーマンなの!」
「それでアシャード・ドゥーマン……でも、晴子ちゃん、そんなことまで知ってるあなたって……」
晴子はその問いには答えず、ドゥーマンに向かって叫ぶ。
「邪悪なる陰陽師、アシャード・ドゥーマン! あたしに見覚えはない!?」
ライダーたちに充分なダメージを与え、余裕綽々なドゥーマンが晴子に振り向く。
「ふむ……どこかで見たような気もするな」
「八年前、あんたが日本で暴れた時よ!」
「おお、思い出したぞ、あの時の小娘か」
「そうよ! 私は安倍晴子、陰陽師としての名はアベノ・セイコ! 父母の仇! 覚悟なさい!」
「これは笑止……お前の父でさえ手も足も出なかったワシに敵うとでも思うか? わははははは、思い出すわ、お前の父の無様な最後をな!」
「くぅっ……」
晴子、いや、アベノセイコは悔しさの余り唇を噛み締めた……。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
八年前、やはりクリスマスシーズンの事だった。
作品名:われらの! ライダー!(第四部) 作家名:ST