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　後悔先に立たずとはよく言ったものだ。そんな後悔が私の身に降りかかるなんて微塵も考えていなかったし、こんな特殊な後悔があるとは知らなかった。それでも、この状況に至る原因は、これまでの人生の至る所にあったと言わざるを得ない。あたりまえだ、この場所へわざわざ出向いたのは自分の意志だからだ。

　しかし、これが私の人生の細かな片鱗の積み重ねの結果だとして、誰がこのような未来を予想できたであろう。私は完成型が想像できないパズルのピースを無造作に並べていたにすぎない。しかし、いつのまにかパズルは完成に近づいていたのだ。そして、その完成型は我々の世界の合理では到底理解し得ないものだった。

　私は今ただならぬ状況にいる。驚くなかれ、私の目の前には赤や緑と目まぐるしく色を変えて発光する物体がホバリングしているのだ。それがこの場所の評判を聞いて仕込まれた達の悪いイタズラでないことは、その巨大さから伺うことができる。恐怖と熱気で朦朧としているせいか、あまりうまく把握できないが、１５メートル、いや３０メートルくらいはあるだろうか、強烈な光の塊が私の存在を弄ぶかのように、目前の木立の上でゆっくりした上下運動を繰り返している。

　ここは、インターネットやオカルト雑誌などでＵＦＯが目撃できるとか、誘拐されるとか噂になっていた場所だった。そのどれにも、はっきり住所は明記されていなかったが、雑誌のボヤケた写真と情景の描写だけで、すぐにこの場所だとわかった。そこが私が住んでいる北松前からそう遠くない場所にある閉鎖された私設の植物園だったからだ。５年くらい前、この植物園を遊び場にしていた地元の小学生が行方不明になるという事件がおこっている。そしてその時、発光する飛行物体が近所の住民複数により目撃されていることから、宇宙人に誘拐されたのではないか、と一時メディアで騒がれたことがあった。

　そんな場所なのだから、目の前にある「それ」が出現することは、ある意味あたりまえと言えるかもしれない。出るべきところに出たのだ。しかし本当に出るとは思っていなかった。私はＵＦＯを他星から飛来する宇宙船だとは考えていないアマチュアのＵＦＯ研究家で、この場所を一応訪れ、空飛ぶ円盤マニアが集まって出版している同人誌に、この珍道中をおもしろおかしく寄稿できればよかったのだ。