われらの! ライダー!(第三部)
「あんたが話に聞くくの一ね? 蝙蝠女も嫌いだけど、あんたも気に入らないわ! なによ! 白い忍者装束って、気取ってんじゃないわよ!」
「別に気取ってなんかないわよ、これでも食らいなさい!」
レディ9に変身した志のぶがクナイを投げつける、狙いは違わなかったが、蚊はホバリングで空中を自在に移動することが出来る、ひょいひょいとかわされてしまった。
「あんたの血なんか美味しそうじゃないけど、干物にしてあげるわ!」
そう叫ぶと急降下して来た。
「えいっ!」
煙玉を地面に投げつけ、姿を隠すレディ9。
「え? 何? まさかバルサン?」
「残念、次はバルサン玉を用意しておくわね」
不意に後ろから声をかけられた蚊女は飛びあがって驚いた。
「もうっ! びっくりさせるんじゃないわよ! でも、今度はあなたが驚く番みたい」
「あっ、しまった!」
蚊女に意識が集中し、背後がおろそかになった隙を衝かれて戦闘員に羽交い絞めにされてしまったのだ。
「よくやったわ! ひからびて死になさい!」
蚊女が唇から変形した針を光らせて一直線にレディ9へ!
「はっ!」
これも忍びの術の一つ、極度に可動域を広げた肩関節を利して羽交い絞めからするりと抜ける。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
叫んだのは戦闘員、蚊女の針攻撃をまともに受けてしまったのだ。
「ちょっと! ちゃんと捉まえてなさいよ、役立たず!」
「うおおおおおおおお! 痒い!」
「男ならそれくらいガマンしなさいよ! 血は吸わないであげたんだから」
普段からライダーたちにボコボコにされてばかりの戦闘員、痛みにはいい加減慣れているが、いかな豪傑であろうと痒みには耐性がないのが人間と言うものだ。
あの小さな蚊に食われただけでも猛烈に痒い、それが人間サイズの蚊に食われたのでは堪らない、全身を痒みに襲われてのた打ち回る姿は、レディ9もつい気の毒になってしまうくらい悲惨だ。
「ちょっと! 味方に随分とひどいことするじゃない?」
「あんたの知ったことじゃないでしょ!」
再び針を光らせて一直線。
「えい!」
「また煙玉? バルサンじゃないのはわかってるんだから、もうその手は効かないわよ! ふぎゃぁぁぁぁ!」
煙が晴れると、そこに立っていたのはレディ9ではなくマッスル、本部席のテーブルを盾にしていた。
「ほう、このテーブルに刺さるとは大したもんだ、だが貫くことまでは出来なかったようだな」
「ぬ、抜けない、なんとかして!」
「あいにく敵に塩を送るほど人間が出来てないもんでね」
「うああああああああ! 目が廻る」
マッスルがテーブルごと蚊女をふりまわすと、針は抜けてしまい、蚊女は空中で体勢を立て直した。
「あなた、気をつけて、マラリアやジカ熱のウイルスを持ってるかもしれないわ!」
「そうか、こいつはしくじったな、テーブルに刺さったままならウイルスも怖くなかったんだが」
「うふふ、そうね、どんなウィルスを持ってるのかしらねぇ……それと気付いてるかしら?なにも狙いはあんたたちばかりとは限らないわよ」
蚊女はホバリングで向きを変え、ギャラリーに向かう!
「いけない!」
レディ9がとっさに投げつけたクナイ、今度はギャラリーに向かっていて側面への注意が疎かになっていた蚊女の翅を直撃、蚊女はどうっと地面に叩きつけられた。
「んもう! 邪魔ばっかりして!」
翅が使えないならばと、走ってギャラリーに向かおうとする。
「ぼうや、そのバット貸してくれるか?」
「マッスルの役に立つならいいよ!」
「後で必ず返すからな」
金属バットをひっつかんだマッスルが蚊女に向かい、レベルスイング一閃!
「ぎゃああああ! 針が折れたぁぁぁぁぁぁ!」
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「ライダー! 待たせたな」
ライダーマンは何故か本部席に。
「おお、ライダーマン!」
「超音波は大丈夫か?」
「耳栓のおかげでだいぶ助かってるが、ちと厄介だな」
「今消す」
「消す?」
「消せるもんなら消してみなさいよっ!」
「ノイズキャンセラーを知らないな? これでどうだ? ライダー」
「おお! 超音波が消えたぞ」
「きぃっ! どうやって……」
「お前の超音波の周波数に合わせて逆波長の音波を出してキャンセルしたのさ」
「もう、余計なことを!」
蝙蝠女は羽を広げて飛び立つ。
「ライダー! 牙に気をつけろ、噛み付かれると狂犬病の怖れがある」
「何っ? そうか!」
「よく気がついたわね……あ、いいこと思いついちゃったぁ」
蝙蝠女はライダーではなく戦闘員に向かって急降下、ガブリ、ガブリと二人の戦闘員の肩に噛み付いた!
「「ぎゃぁぁぁぁ!」」
「どう? この二人をギャラリー席に向かわせたらどうなるかしらね? あ、言っておくけどこの狂犬病ウィルスは突然変異体よ、噛まれてすぐに発症するし、人から人へも感染するの」
「随分とご都合主義のウィルスだな」
「文句があるなら作者にお言い! 感染るったら感染るのよっ!」
「だが、こちらにも用意がないと思うなよ」
「それは一体何? 随分とちゃちな武器ね」
「二度目の登場、水鉄砲さ」(『友よ! ライダー!』対シューゾー戦参照)
「水鉄砲? それが何の役に……あっ、いけないっ!」
狂犬病に冒された者は水を極度に恐れる。
「うああああ! 水だぁ!」
走り出す戦闘員たち。
一目散に逃げようとする二人の首根っこを掴んだのはマッスル!
「おっと、狂犬病患者が勝手に走り回っては困るな、頭を冷やして来い!」
二人をぶん回してプールへと投げ込んでしまった。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「何よ、あんた、もう攻め手はないのっ?」
そこへふらふらとやって来たのは針をへし折られた蚊女だ。
「ふん、針が折れたあんたこそ能無しじゃない、あたしにはまだこの牙があるわ」
「あんたの動きの遅さじゃ宝の持ち腐れだけどね、ちょっとはダイエットしたら?」
「なによっ! それ、どういうこと?」
「遠まわしに言ってもわからないならはっきり言ってあげるわ! あんたは太りすぎだって言ったのよっ! このデブ!」
「なんですって! きぃぃぃぃぃっ!」
「一体どうなってるんだ?」
突然の内輪揉めに、ライダーとマッスル、レディ9は怪訝顔だ。
その疑問を解いたのは、博識のライダーマン。
「どうやら相性は最悪のようだ、蝙蝠は蚊を捕食するからな」
「「「……ああ、ナルホド……」」」
「蚊女はすっこんでなさいよ!」
「蚊女じゃなくて、モスキートガールって呼んでって、いつも言ってるじゃないの!」
「何がガールよ! 大年増のクセに」
「デブのあんたに言われたかないわよっ!」
「それならあたしもバットガールって呼びなさいよ」
「それってパクリじゃない!」
「じゃ、ベイビーバットよ!」
「ふん、あんたがベイビーってタマ?」
「うるさいわね、今時50代だって『女子会』とか言っちゃうでしょ!」
「あ~、ムリムリムリ、50代はOKでもあんたにはムリ、どう見たって『女子』じゃなくて『オバハン』だもん」
「きぃ~っ! ガブッ!」
作品名:われらの! ライダー!(第三部) 作家名:ST