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われらの! ライダー!(第三部)

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1.夏休みなのに! ライダー!


(2016.09 お題:『湖』、『トラック』、『目覚まし時計』 ライダーたちは湖畔の温泉に夏休み旅行中ですw トラックはチラッとだけ、この月に目覚まし時計を主人公にした小説を書きましたので目覚まし時計はご勘弁ということで……)


『夏休みなのに! ライダー!』


「あ~~、いい湯だなぁ」
 硬派を自認し、普段は険しい目つきをしていることが多い仮面ライダーこと一文字隼人も、雄大な景色を眺めながら露天風呂に漬かれば、自然と顔が緩む。
「まったくだ、生き返るようだぜ」
 仮面ライダーマッスルこと納谷剛も、手で湯をすくって顔を洗うと青空を見上げる。
「厳しい戦いが続いているからな、たまにはこうして体のケアもしないとな」
 ライダーマンこと結城丈二は、科学者らしく能書きを垂れるが、思い切り伸びをしてリラックスする。
「全くだ、あちこち油の切れた体には、何よりの薬だよ」
 おやっさんこと立花藤兵衛もご満悦の表情だ。

 ライダーたちの隠れ蓑である立花レーシングチームは夏休み。
 北海道旅行の途中、屈斜路湖に来ている。
 屈斜路湖の湖畔には温泉が湧き、湖の美しく雄大な景色を眺めながら露天風呂を楽しむことが出来るのだ。
「「「「ふぅ~」」」」
 三人ライダーとおやっさんは足を投げ出して湯に漬かり、すっかりリラックスしている。

「あ~、温泉なんて久しぶり……あたたたた」
 紅一点の志のぶもまた露天風呂を楽しんでいる。
 志のぶはまた格闘修行の真っ最中、体中あちこち痣だらけ、温泉の湯が沁みるが、むしろ体の中から癒される心持がする。
 しかも旅行中は掃除、洗濯、食事の用意からも解放される、心底のびのびとリラックスできる……はずだった……。

「あら、あれはなにかしら?……」
 景色を眺める志のぶの目に、マットブラックの不審なゴムボートが飛び込んで来る、湖中央の中ノ島から漕ぎ出して来たらしい。
「遠くて良くわからないわね……」
 志のぶは視神経に意識を集中した、千里眼の発動である。
「あれは地獄大使!……隣の男はなんだかひ弱な感じ……スーパー戦闘員は……七人ね」
 まったく……せっかくのんびりしようとしていたのに、北海道の温泉に来てまでショッカーに出くわそうとは……。
 とは言え、ショッカーが現れたとなれば休みだからとも言っていられない、志のぶは額の辺りに意識を集中して剛に念を飛ばす。


「ん?……ライダー、ライダーマン、おやっさん、ショッカーが現れたらしい」
 男湯では剛がザバッと立ち上がった。
「志のぶさんからの愛のテレパシーだな?」
「『愛の』は余計だよ、照れるじゃないか」
「相手は?」
「地獄大使、スーパー戦闘員が七人、それとひ弱そうな男だそうだ」
「ひ弱そうな男……DaiGoNか……」
 ライダーがうんざりしたように言う……どうもDaiGoNとは相性が悪い……。
「みんな、休みのところ悪いが、ショッカーが現れたとなると見過ごせん」
「もちろんだよ、おやっさん、行こう!」
「「おう!」」


ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!


「何っ!? ライダーどもだと? どうしてここがわかった?」
 地獄大使は目を丸くしている、どうやらここで遭遇したのは偶然だったようだ。
「あいにくだったな、たまたま旅行に来てのだ、こっちこそせっかくの保養を台無しにされて大迷惑さ」
「ならば見過ごせばよかろうに」
「そんなわけに行くか!」
「融通の効かん奴らだ、関わらないのがお互いのためだと言うのに……だが、ライダーに遭遇したとあればこちらも見過ごせんな」
「余裕を見せていられるのも今のうちだけだ、地獄大使! 覚悟しろ!」
「しゃらくさいわ! DaiGoN、出番だ!」
「ライダーガセントウデキリコンデキマス、ライダーマンハロープアームヲソウチャクスルツモリデス、マッスルハタテカンバンニメヲツケマシタ」
「うっ……異常な早口に磨きがかかっている」
「また先読みを……これはたまらん」
「頭が混乱するぜ」
 ライダーはもちろん、ライダーマンとマッスルも視覚、嗅覚、そして聴覚を鋭敏にするマスクをかぶっている、行動を先読みされてDaiGoNの異常な早口でまくし立てられると強いストレスに晒されるのだ。
「わはははは! どうだ、マッスル、今度は貴様も混乱させられるだろうが!」
「くそっ、だが、手はあるぞ、これでどうだ!」
「おお、その手があったな!」
 マッスルとライダーマンはマスクをかなぐり捨てた。
「な、なにっ!」
「ははは、これでDaiGoNの能力は封じたぜ! 聞き取れなければ何てこたぁないんだ」
「だが、お前たちの戦闘力も削がれたのではないかな?」
「まあな、だが俺は知ってるぜ、前回の戦いで格闘のエリートたちを失っているだろうが、 マスクをつけてても俺にはそいつらが誰なのか見当がつくぜ!」
「うっ……」
「さあ! どこからでもかかってきやがれ! 俺に勝てると思うならな!」
「「「「「「「……」」」」」」」
「お、お前ら! 怯むな! 七対三だろうが! あ、いや、DaiGoN続けろ、ライダーはマスクを脱げん、奴一人でも封じるんだ、七対二のほうが分が良い……おい、どうした? DaiGoN……なになに? 『あれは誰?』だと?」
 その時、一足遅れて駆けつけたのは志のぶ、抜群のプロポーションのナイスバディを純白のぴっちりした忍びスーツに包んでいる、顔は目だけしか出ていないが、パッチリとしているのにどこか和風美人を思わせる目が印象的だ。
「名前は知らんが、ライダーたちの仲間だ、どうやらくの一の能力を持っているらしいが」
「ふふふ、レディ・ナインと呼んで頂戴」
「……だ、そうだ……なに? 『本名を知りたいだと?』それが戦闘と何の関係が……ああ、わかったわかった、いちいち拗ねるな、おい! 本名はなんだ!?」
「それを教える義理はないわね」
「一理ある……おい、DaiGoN、聞いてのとおりだ、諦め……おい、何を赤くなってモジモジしておる……なになに? 『彼女いない歴二十ウン年、こんなにトキめいたのは初めてです』だと? 戦闘中だぞ! いいかげんに……」
「ライダー、復~活!」
「しまった! ライダーまで復活してしまったではないか! ええい! DaiGoN、奥の手だ、アレを呼び出せ!」
「Kiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii Kyuuuuuuuuuuuuuu」
 DaiGoNが奇声を発すると湖面がぐっと盛り上がり、ライダーたちも思わずたじろいだ。
「な、なんだ、あれは!」
「で、でかい! 七メートルはあるぞ!」
「まさか……首長竜か?」
「わははははは! 知らんか? この湖に伝わる噂を」
「ク、クッシーかっ? まさか実在したとは……」

 解説しよう、ネス湖のネッシーと同じように、ここ屈斜路湖でも、かつて首長竜の目撃情報が数多く報告されている、科学者たちが、屈斜路湖の水質が酸性で生息する魚が極端に少ないことから巨大生物の生存は不可能と結論付け、その後は何かの見間違いだとされていたのだ。