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われらの! ライダー!(第一部)

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 だが、とりもなおさずここは戦場、ここで功績を挙げれば妻と一緒にハワイのサンセットを眺められるのだ……ああ……あいつに花のレイを掛けてやりたい、あいつと洋上ディナーを楽しみたい、フラダンスのショーが見たいし、ハワイアンも聴きたい……。
 それだけじゃない、教官くらいには取り立ててもらって職を確保しておかなくては……あいつのためにも……。
 その強い想いを胸に、俺はノーマル戦闘員の先頭に立ってライダーに襲い掛かった。
 元々常人より筋力が優れている俺だ、プチ改造効果で戦闘力は常人の2倍どころか3倍、4倍にもなっているはず。
「食らえ! ライダー! スーパー戦闘員パンチ!」
「ぐっ……」
 ライダーのボディにパンチを打ち込むと、ライダーがひるんだ。
 おお! 何ということだ! この瞬間をどれだけ待ち望んで来たことか! 俺が、この俺が……ライダーに一矢報いることができるなんて!! 夢のようだ!!!
 俺の脳裏にハワイのサンセットがちらつく……妻の笑顔も……。
 ひるんだライダーの腕をノーマル戦闘員たちが掴む、今この時、ライダーは俺の前で無防備なのだ!
「よくもこれまで散々痛めつけてくれたな、ライダー! 積年の恨み、この一撃に込めてお見舞いするぜ! 食らえ!! スーパー戦闘員正拳!!!」
 俺はライダーの眉間めがけて渾身の正拳突きを放った。

「ぎゃぁ!」
 ……悲鳴を上げたのは俺のほうだった……。
 筋力は何倍にも跳ね上がった、しかし、ライダーの眉間、そこはとてつもなく硬かった……俺の指の骨は急激で過剰なパワーアップについて来れずに砕けてしまったのだ。
 
「このばか者が! 調子に乗りおって! 撤収だ!」
「あ……死神博士!」
「暴れるだけが取り得の能なしにはもう用はない!」
「俺も連れて帰って下さい!……ああっ!……博士……………………くそっ!」

 死神博士たちが逃げ去って、残されたのは俺とライダーの二人だけ……俺は死を覚悟した、ライダーキック一発で俺は粉々に砕け散るだろう……。

 すまない……最後まで馬鹿な夫だった……こんな俺を許してくれ……。

 しかし、いつまでたってもライダーキックは飛んでこない、その代わりにポンと肩を叩かれて俺は顔を上げた。

「君の勇敢さ、得体の知れない薬に志願したその忠誠心には感服したよ……でも、さすがに目が醒めただろう?」
「……」
 その通りだ……ショッカーに恩返ししようとプチ改造に志願したのに、負傷したらポイ捨てとは、あまりと言えばあまりの仕打ちじゃないか……。

「君のその常人離れしたパワーは必ず他で生かせるはずだ、心を入れ替えて頑張ってくれ、もうショッカーに戻るんじゃないぞ……」
 ライダーはそう言い残すと、ひらりとサイクロン号に跨った。
「君のパンチ、効いたぜ、一瞬クラクラしたよ」
 ライダーはそう言って微笑みを浮かべ……たかどうかはわからなかったが……走り去った。


ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!


 額のショッカーマークに赤いバツをつけた黒いマスクをかぶった覆面プロレスラーが華々しいリングデビューを飾ったのは、その数ヶ月後のことであった。
 怪力を利しての圧倒的勝利、そして試合後のマイクパフォーマンス。
 
「ライダー! 見ててくれたか!? こんな俺でも手助けできることがあったらいつでも言ってくれ! 俺は技を磨いて恩返しの時を待ってるからな!」

 新たなスターの誕生に沸くアリーナ、その一角でそっと目頭を押さえる女性が居た……。
「あなた……とても立派よ……」


             (見てくれ! ライダー! 終)