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われらの! ライダー!(第一部)

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3.ぼくらの! ライダー!



(2016.04 お題:『過剰』、『手を繋ぐ』、『サイコロ』 過剰はそのまま使っていますが、手をつなぐは握手に、サイコロはドミノで代用していますw)


『ぼくらの! ライダー!』


「とぉっ!」
「イーッ!」

 ゴールデンウィーク、仮面ライダー・一文字隼人は後○園遊園地で『営業』中だ。
 正義のヒーローと言えども霞を食べて生きている訳ではない、生活の糧は必要、なにしろ命がけでショッカーと戦っても報酬はゼロなのだ。
 遊園地のヒーローショーで、ニセモノのショッカーと戦って子供たちを騙すのは気が引けるが、非常に割の良いバイトであり、子供たちも喜んでくれるのだからよしとしている……世界の平和を守って戦うためには食わねばならず、そのためには致し方ない、腹が減っては戦ができぬと言うではないか。

 ジェットコースターに仁王立ちとなって大見得を切ったライダーは、ステージに飛び降り、群がる戦闘員たちを蹴散らす……はずだった。
 しかし、スタントマンたちに怪我をさせないよう、手心を加えたパンチやキックでは戦闘員たちはひるまない、ライダーは後ろから羽交い絞めにされてしまい、戦闘員の攻撃を顔面に、ボディに受けてしまう。
 何か様子が違う……どうやら戦闘員たちは本気で立ち向かって来ているようだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「むぐぐぐぐぐー(助けてくれー)!」
 その頃、本来のショー出演者である死神博士役の役者、怪人や戦闘員役のスタントマンたちは楽屋で縛り上げられ、猿轡をかまされていた……。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(こいつら、本物のショッカーか、おのれ死神博士め! 良い子たちを巻き添えにする気かっ)
 事態を悟ったライダーは羽交い絞めを振りほどき、力を込めたパンチやキックを繰り出して戦闘員たちを次々と吹っ飛ばす。

「ライダー! 頑張れ!」
「負けるな! ライダー!」

 戦闘員たちが本物であることを知るよしもない子供たちは大喜び、それもそのはず、結果的にはいつになく真に迫った大迫力のショーになっているのだから。

「わはははは、ライダー、油断したな!」
「死神博士! 貴様、どういうつもりだ、良い子たちを危険に晒す気か!」
「知ったことか! 今までは秘密裏に世界制服を目論んでいたが、貴様とTV局のせいで秘密であるべき秘密結社が有名になってしまったではないか、この遊園地も同罪だ、もはや暗躍の必要はないのだ! そうと決まれば貴様ばかりに良い格好させてなるものか」
「開き直ったか! 死神博士」
「当然だ、我々ショッカーは斬られ役ではないことを世に示さねばならん! 覚悟しろライダー、貴様に憧れる子供たちの前で無残な姿を晒すが良い! 出でよ! 怪人・プラナリアン!」
「プラナリアン? なんだかぶよぶよ・ぷるぷるしていて、とても強そうには見えないが?」
「むふふふ、見た目で判断して良いのかな? プラナリアンは貴様の攻撃を全て無効化する能力を持った怪人なのだ」
「何だと!?」
「行け、プラナリアン!」
「なんの! ライダー・パンチ! 何っ!?」
「わはは、どうだ、貴様のパンチがいかに強力であろうと、プラナリアンの体はその衝撃を吸収してしまうのだ!」
「くそっ、これならどうだ! ライダー・チョップ! えっ!……これは一体……」

(解説しよう、プラナリアンは再生能力を持つプラナリアのDNAを組み込まれた怪人であり、プラナリアは真っ二つに切られても完全な二つの個体に再生する能力を持つ生物である。

参考画像 http://favoritesciencenews.blog.fc2.com/blog-entry-4.html

 怪人・プラナリアンもまたその能力を受け継いでいる、ライダー・チョップで真っ二つにされたプラナリアンだが、上半身からは下半身が、下半身からは上半身が再生し、二つの個体に分裂したのだ。)
 
「う……両側から抱きつくな、気持ちが悪……うぐ……」
「わはは、プラナリアンに抱きつかれると、そのぶよぶよした体で窒息させられてしまうのだ、視覚的には至って地味だが有効な攻撃だぞ、しかもパンチもキックも効かん、どうだ? ライダー、手も足も出まい」

「ライダー! がんばれ~!」
「負けるな~! ライダー!」

 子供たちの大声援が飛ぶが、もがけばもがくほどプラナリアンはへばりついて来る、危うし、ライダー!

 その時だ。
「ア~マ~ゾ~ン!」
「うっ! このわかりやすい掛け声は!」
「そうだ! 仮面ライダー・アマゾンだ! 二号、助けに来たぞ、大切断!」
「またもや時系列を無視しおって! しかし、アマゾン、貴様の必殺技は却って仇となるのだ!」
「何だと?」
「待て、アマゾン、今回ばかりは死神博士の言うとおりだ、見ろ!」
「なんだ? これは? 怪人が増えている!」
「斬られても斬られても分裂再生する怪人なんだ、無闇に斬ると数を増やすだけだ!」
「くPっ」(子供向けに不適切な表現により、電子音被せ)
「しかし、なにはともあれ君のおかげで窒息を免れた、ありがとうアマゾン、しかし、良くこんなに早く」
「今はそんな事はいい! この厄介で気持ち悪い怪人を何とかせねば!」
「待てよ……アマゾン、プラナリアンは増えているが、小型化していないか?」
「確かに……そうか! 完全に再生するには多少の時間がかかるんだ!」 
「ならば……」
「わかったぞ、二号、連携攻撃だ! まずは俺から……連続大切断乱れ撃ち!」
 アマゾンが目にも止まらぬ速さで手刀を奮うと、プラナリアンは瞬く間に数十もの個体に分裂・再生するが、サイズは元の固体に遠く及ばない。
「今だ、二号!」
「よし! とぉっ! ライダ~~~・キィック!」
 先頭のプラナリアンにライダーキックを見舞って爆発させると、ドミノ倒しのように連鎖反応を起こし、プラナリアンは一度に数を増やした……が、過剰に分裂したせいで、その体のサイズは数センチに過ぎない。
「わははは! 愚かな! ライダー、プラナリアンをここまで増やしてどうする? 今は随分と小さくなってしまったが、貴様らはたった二人だ、踏み潰している間に元通りに大きくなったプラナリアンが貴様らを襲うぞ!」
「死神博士、愚かなのは貴様のほうだ、こっちには大勢の仲間がいるんだ!」
「何だと? 強がりを言うな、どこにそんな者がおると言うのだ!」
「良い子のみんな!!! プラナリアンがまだ小さいうちに踏み潰すんだ!!!!」
「うわぁ~い!!!!!」
 大歓声が上がり、まだ数センチにしか過ぎないプラナリアンは次々と踏み潰されて行く。

「しまった! まさか、こんな……おのれ! ライダー、そして子供たち、覚えていろ!」

 バーン!

 死神博士はショーの為に仕掛けられていた煙幕にまぎれて逃走した。
「待て! 死神博士!」
「いや、アマゾン、今はプラナリアンの駆除が先決だ、大きくなると厄介だぞ」
「確かにそうだ、良い子のみんなも頑張ってくれ」
「私たちに力を貸してくれ!」
「うわ~い!」