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われらの! ライダー!(第一部)

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8.番外編 お祖母ちゃんの秘密



(またまた2016.06 お題:『恩返し』、『ストレス』、『瓶』 前作で入れられなかった瓶をチラッと、ストレスと恩返しは入れられませんでした、ライダーは得てして男くさい話になるので、番外編でちょっと花を添えてみました)


われらの!ライダー! 番外編 『お祖母ちゃんの秘密』


「とぉっ!」
「そうだ、いいぞ! だいぶその強化スーツに慣れてきたみたいだな」
「ありがとう、ライダーマン、だが、ショッカーの怪人と互角に渡り合うにはもっと訓練しないと」

 晴れてライダーの仲間となったマスクド・アンショッカーは、元々優れた科学者でもあるライダーマンが開発した強化スーツを身につけ、その能力を最大限に発揮すべく、ライダーマンの指導の下、訓練に余念がない。

「君は努力家だな、元々常人の二倍の筋力を持つ君だ、死神博士のプチ改造で更に二倍、この強化スーツでまた二倍、いまや常人の八倍の筋力、しかもプロレス修行で数々の必殺技も身につけている、既に私よりずっと強いぞ」
「いやいや、まだまだだよ、それに、こんなに充実した日々は初めてだよ、こんな日々をもたらしてくれた君たちライダーチームに恩返ししたいんだ、訓練してもっと強くなるさ」
「頼もしいな、そんな君にプレゼントがあるんだ」
「なんだい?……こ、これは……カッコいい……」
「私が作った新しいライダーマスクだ、これをかぶれば頭部の保護になるだけじゃない、視覚、聴覚、嗅覚が二倍に跳ね上がる」
「おお、素晴らしい!」
「君の名前も考えないとな」
「名前?」
「V3とかアマゾンとかストロンガーとか色々あるだろう?」
「待ってくれ、ライダーを名乗るのはまだ早いよ」
「そんなことはないさ」
「いや、実は……バイクの免許を持っていないんだ……」

 そんなわけで、マスクド・アンショッカー改め、仮面ライダー・名称未定は訓練に、大型自動二輪免許取得にと忙しい日々を送っている。

 そんな折、彼の妻、志のぶのお祖母さんが亡くなり、彼女はその葬儀のために田舎に出かけることになった。
 それは危険だって?
 心配ご無用、志のぶの顔は、居酒屋で語り合った親友しか知らないし、何を隠そう、前回の戦闘でスーツド戦闘員の弱点をこっそり教えてくれたのはその彼なのだ。


 
「百歳になっても毎日畑に出ていたんだよ」
「本当に考えられない位元気なお祖母ちゃんだったねぇ……」

 葬儀を終えて、子供たち、孫たちが広縁でくつろぎながら亡き祖母の思い出を語り合っていると……。

「形見分けよ、みんなどれがいい?」
 伯母が様々なものを座敷に抱えて来た。

「これ、何かしら……」
 志のぶが何故か気を惹かれたのは、梅酒を漬ける瓶に沢山の乾燥剤と共に大事にしまわれていた巻物の数々……。
 それを紐解いてみると……。
「何? これ」
「達筆過ぎて読みにくいけど……『忍』って書いてない?」
「『火○の術、かな?』
「こっちは『水○の術』じゃない?」
「だとすると、読めない字は『遁』かしら?」
「なに? これ、忍術の秘伝書?」
「まさかぁ」
「そうよね、いくらお祖母ちゃんが長生きしたって言っても、大正の生まれよ、忍術なんて」
「お祖母ちゃんの趣味かしら?」
「確かにありえないくらい元気だったけど、さすがに忍術はねぇ」
 誰も本気にしない……しかし、志のぶには思い当たるフシがあった。

 志のぶも人並みはずれて元気が良く運動神経も抜群だった、そんな志のぶをお祖母ちゃんはひときわ可愛がってくれ、志のぶもそんなお祖母ちゃんが大好きで良く二人で野山に遊びに行っていたものだ。
 そして、お祖母ちゃんが時折垣間見せた人並み外れた能力の数々……。

 もし火遁の術を心得ていたならハイカーの火の不始末から発生した山火事を小火で消し止めたのも頷ける。
 川で溺れかけた自分を救ってくれた時の、まるでかわうそのような素早い泳ぎは、もしや水遁の術?
 ほかにも沢山ある。
 足音も立てずに犬より速く走れたのは何故?
 猿より素早く木に登れたのは何故?
 突然現れたイノシシを正拳一撃で倒せたのは何故?
 猟師の流れ弾をいち早く察知できたのは何故?
 二メーターもある岩にひと跳びで跳び乗れたのは何故?
 切り傷や腹痛があっという間に治る薬草をどこでも見つけられたのは何故?
 地面に耳をつけると一キロ先の人や動物の足音を聞き取れたのは何故?
 向かいの山に一輪だけ咲いていた珍しい花を見つけられたのは何故?
 食べられる植物を沢山知っていたのは何故?
 天候の急変をいち早く察知できたのは何故?
 そして、自分を狙っていたマムシに投げつけて地面に釘付けにしたのは? あれは手裏剣だったの?……。

「これ、あたしが貰っていい?」
「うん、いいよ」
 巻物には他には誰も興味を示さなかったが、志のぶには宝物のように思え、大事に持ち帰った……。


                (お祖母ちゃんの秘密 終)