人魚姫
Black boat
鉛のように
重鎮した心を
抱えた姫
海上で見た
グロテスクな客船は
海を切り裂き
巨大な羽が
海水を掻き乱し
静寂な海を
荒らしている
雑音を鳴らし
膨らんだ海月を
着飾った人間達が
気が狂ったように
クルクルと踊る
悠然と椅子に座る
十六歳の王子の
誕生を祝っているらしく
海を汚す王子に
憎悪を抱いた
スクリューに
巻き込まれそうになった
姫は死に者狂いで
呪いを唱えると
突然 海の形相が変わり
稲妻が走り
強風が吹き
波が唸りだし
水夫達が必死で帆を畳み
客船からは
狂気の悲鳴が聞こえ
荒れ狂う海へ
投げ落とされていく
海罰を喰らい
もがきながら
溺れてゆく人間達を
姫は愉快に嘲笑っていた
船から
憎い王子が
姫の真横に
振り落とされ
王子は半狂乱になり
藁をも縋る思いで
姫の綺麗な髪を
鷲掴みする
「離して!汚らわしい!」
姫は必死で王子を
拒絶したが
溺れ掛けている王子も
必死でしがみついてくる
姫は怪訝そうな顔で
渋々 嫌々ながら
浜辺へ連れて行く事にした