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ヒトサシユビの森 4.クスリユビ

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4.クスリユビ




「デジャブーってやつみたいだな」
「健市、お前まさか?」
坂口はいぶきの失踪に蛭間が関与しているのではないかと疑りの目を向けた。
蛭間は真顔で即座に否定した。
「なことするか。俺は今県会議員だし、昨日はお偉いさんの接待でそれどころじゃなかった。もしかしてお前ら?」
蛭間は逆にその場にいた坂口、玉井、茂木を訝った。
だが皆それぞれの地位のある立場になった今、不要なリスクを負う理由がなかった。
蛭間は返事を聞くまでもなく、自ら疑問を打ち消した。
坂口土建の倉庫の2階に設けられた猟友会事務所に4人の姿があった。
溝端かざねが連れてきた4歳の子どもについて情報を交換するためだ。
その子どもいぶきが行方不明になっているということも4人の耳に入っていた。
「疑うなんてひどいよ、健ちゃん」
「落成式で一緒だったろ。どこにそんな時間がある?」
「悪かったな、茂木、坂口」
蛭間は茂木の肩をたたいて続けた。「その落成式で溝端かざねを久しぶりに見た。かざねの母親を見舞いのため帰ってきたようだ」
玉井が引き継いだ。
「落成式にいたあの子どもはかざねが東京に出たあと、芸術家を名乗る男との間にできた子だ。戸籍を調べた。3年前に離婚しているがな」
再び蛭間が茂木の肩に手を置いて言った
「だから茂木、心配するな。あのガキが山に埋めた子であるはずがない」
「だいたいあれから5年経ってるんだ、生きてたら9歳くらいだ。あんなちっちゃはずがない」
「でもじゃあ、なんで僕たち4人を指さした?」
「ガキの気まぐれだよ」
「とくに大輔は怖い怪物みたいな顔してるからな」
茂木は納得いかない。
「あの子どもにすれば、僕たち4人とも初対面のはずなのに。おかしいと思うのが普通だろ? 病変で成長が止まる子どももいる」
「考えすぎなんだよ、茂木は」
「健坊はどうなんだ?」
蛭間は、いぶきの気まぐれという玉井や坂口に考えとは異なる考えを持っていた。
「溝端かざね。あいつが何か嗅ぎつけたか」
携帯電話の着信音が鳴った。坂口の携帯電話だった。坂口は発信元を見て
「警察からだ」と言った。蛭間らは息を呑んだ。