シマダイ! - あの日の しゃーたれっ子 -
ほとんどミサコ達のペースに巻き込まれ、隠れんぼで遊ぶことになった。
「ジャーイーケーンで、ホーイ!」
鬼はツヨっさんがやる事になった。一階の階段まで降りてから、二十まで数える。
「イーーチ、ニーーイ」
残った四人がいっせいに隠れ場所を探しに散った。ただでさえ負けず嫌いな俺は、学校でパンツを見られた屈辱もあって、アッコにだけは負けたくなかった。
相手は文字通りホームなのだ。俺が先に簡単な場所に隠れるわけにはいかない。ギリギリまで粘って、絶対に見つからない所に隠れなければ。
「ナーーナー、ハーーチー」
ツヨっさんのカウントが進む。二階には特にピンと来る場所はなかった。残りの秒数を気にしつつも、俺は三階へと急いだ。
「ジューーサン、ジューーシーー、ジューーゴー……」
ヤバい、もうあまり時間がない。俺以外の皆は、もう隠れ終えているようだった。仕方なく俺は、視界に入った何の変哲もない押し入れに飛び込んだ。
襖を閉めると、そこには視界ゼロの真っ暗闇の世界が広がっていた。さすがにこのままではマズイと思い、奥にある布団に潜る事にした。
そっと手を伸ばす……。
「フェッ」
(!?)
何か暖かい物に触れた。いやいや、そもそもこの声は……。
「カ、カコか?」
「シマダイ君?」
「お、おう……」
押入の中には先客がいた。それも……カコが。
「そんなとこにいたら、襖開けただけで見つかっちゃうよ」
カコは自分を包んでいた布団を、そっと俺にも掛けた。
真っ暗闇の中で二人きり。ピッタリとくっついた左半分から伝わる温もりが、俺の心臓を握り潰しそうだった。
暫く沈黙が続いたあと、カコが口を開いた。
「シ、シマダイ君?」
「あんま声出したら見つかるぞ」
「あんな……」
「うん?」
「好きだよ」
「……うん」
「俺もな……」
「うん……、でも」
「え?」
「ちゃんと言って……」
「好きだ」
「うん」
人は嬉しい事があった時、時間よ止まれって言うけれど……。
何も見えない、外の音も聞こえない世界に二人でいると、時間なんて概念 本当に頭から消えてなくなるんだと知った。
目が慣れてきたのか、ぼんやりとカコの顔がわかる。
こちらを向いている。俺を見ている。
俺もカコを見ている。
いったいどのくらい近いんだろう?
鼻と鼻が触れる。近いな……。
次は?
そっと……唇が触れた。
「アッコ見っけー!!」
外からツヨっさんの声が聞こえる。
こっからどんな顔をして外に出ればいいんだろう。そんな事を考えていたら、隣でカコが笑った。
「戻るか」
「うん」
俺達は、二人で襖に手を掛けた。
「せーーの!!」
作品名:シマダイ! - あの日の しゃーたれっ子 - 作家名:daima