小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
daima
daima
novelistID. 61590
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

今宵サンタは軽バンで

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 



ソリ替わりの軽バンを飛ばして、僕は一軒のお宅の前に駐車した。

ずいぶん古い家なので、チャイムもない。


「夜分にすいませーーん!こんばんわーー!おばぁーちゃーーん!!」


暫らく待っていると、奥から優しい声がした。


「はいはい、今行きますよ……こんな時間に どなたですか?」

「僕です。保険の担当でお世話になっています。今日はこんな格好ですが……」

「あらまぁー、驚いた!それに、ずいぶんお若いサンタさんですこと」

「突然こんな遅くにゴメンなさい。プレゼントをお届けに参りました」

「なんてこと、私に?」

「はい。妻の焼いたケーキなんですけど、よかったら……一緒に食べてもらえませんか?」

「まぁー嬉しい!こんなお婆ちゃんになってから、クリスマスにサンタさんからプレゼントが届くなんて。さあさあ、上がって下さいな、そうだわ、紅茶をいれましょうね」


この人は、僕が保険を担当するお婆ちゃんで、この家に独りきりで暮らしている。息子さんは都会に働きに出てしまって、もう何年も帰ってきていないらしい……。

訪問すると、いつも明るく色んな話をしてくれるお婆ちゃん。ホントは、寂しくてたまらないお婆ちゃん……。


「じゃあ、もう帰ります。紅茶、ごちそうさまでした。そうだ、お正月は妻と娘も連れてきていいですか?」

「ありがとう……本当にありがとうね」


お婆ちゃんはそう言って、最後に僕の手をギュッと包んだ。涙がポトリ……。お婆ちゃんの想いの雫。

軽バンに乗り込んだ僕は、先輩に電話をかけて今夜の出来事を話し、ある新しい提案をしてみた。


「来年から子供達に加えて、独居老人のお宅にもプレゼントを配れませんか?費用は、僕が市に掛け合ってみます」


先輩の返事はこうだ。


「バカヤロー! 俺の仕事を取るなよ。金の事は心配すんな、絶対に何とかするから」


来年のイヴは忙しくなるな。あいつにまた、謝らなきゃ……。