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京都七景【第十四章】

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「そうか、困ったな。今の堀井の件で、ルールを確認して置く必要がおきたんだ。この確認を怠るとわれわれは先に進めなくなるかもしれないんだが」露野が深刻な顔をする。

「ああ、そうか、ルールね。ルールのことなんだ。ルールは大事だな。うむ、いいよ、ルールなら。もちろん、かまわないさ」堀井の声が急に明るくなった。

「今、堀井の話が終わり、そのあと神岡の質問が出たので、ちょっとルールの確認が必要だと感じたんだ。手間はかからないから、みんなに確認してほしい。ルールは責任上、俺が一言一句漏らさず手帳に書き取めてあるから安心してくれ。じゃ、必要箇所を読むよ、いいかい。
『ルール四 場所をつなぐことを優先させたために、自分に失恋話が見当たらない者は、友人、家人、知り合い、場合によっては目撃した見知らぬ他人等の失恋話に代えることができる』、ここは、堀井がしてくれた話にあたる。問題はその次、『また、もし失恋話がない場合は、成就しなかった、あるいは現在進行中の成就していない恋愛話に代えてもよい』というところだな。つまり、堀井は失恋話が無かったので、目撃した他人の現在進行中の恋愛話をしてくれた。ここまではいいね。では、ここからだ。神岡の質問が無ければ、あるいは、質問はあっても堀井の答えが違っていたら、堀井にもう手持ちの恋愛話は無かったはずだった。ところが、どうやら、堀井には現在進行中の恋愛話が、ありそうなことがわかった。つまりわれわれの失恋散歩のコース次第では、堀井にも再度登場をお願いしなければならない場合も出て来るというわけだ。堀井には申し訳ないがルールは厳正中立が一番。ということで、ここでみんなの了承をお願いしたい」
「そんな殺生なー…」堀井が悲鳴をあげた。

「俺は賛成する。ルールはルールだからな、悪い、堀井」と大山。

「原因を作っておいて申しわけないが、僕も賛成する。興味深いケースだしな。すまん」
「ま、場所優先だから、必ず二回目があたるというわけでもないさ、ま、ここは納得してくれ。おれも賛成する」わたしが慰めにもならぬ慰めを言う。

「ルールを提案したのはおれだから変更するわけには行かん。涙をのんで、おれも賛成だ」露野が非情に徹する。

「そんな殺生なー」大文字の火が弱々しく映る部屋に、堀井の悲鳴が弱々しく響いた。
作品名:京都七景【第十四章】 作家名:折口学