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レイドリフト・ドラゴンメイド 第24話 受難者たち

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 そして、そこにいた人間たちの全身にまとわりついた。
 白いものは、強い粘着性を持つ物質だった。
 たちまち彼らは、カーマに銃を向けた姿勢のままで固まった。

 悠々と降下するカーマ。
 彼女の両太ももにはホルスターがあり、そこからメイメイ謹製の巨大サブマシンガン2丁を引き抜いた。

 彼女より先に、大地に立った巨体があった。
 男子姿の擬態をしまい、現れたのは日本人なら青鬼を思わせる、非常に筋肉で膨れ上がった肉体。
 身長が60メートルに迫る人型異星人だった。
『バスケ部部長、ディミーチ。
 フンダリング星人。
 彼も怪獣ハンターだった』
 その皮膚は爬虫類を思わせる鱗。
 手にしたのは、長く太い絵を持ち、斧の刃がついた武器、ハルマードだ。
『彼の武器、ハルマードはメイメイ謹製だ。
 さまざまなタイプのバリアを放つことができる』
 ハルマードの刃に、光が宿る。
 その刃が、持ち主の膝下に屋根がくる家々の間に振り下ろされる。
 そこにあるのは、バリアを張る大型トラック。
 突然現れた敵に、トラックはバックして逃れようとした。
 だが、込み入った住宅地で慌てすぎだ。コンクリートの塀に突っ込み、動けなくなった。
 トラックの荷台とほぼ同じ大きさの刃が振り下ろされる。
 荷台にはバリア発生器があった。
 そのバリアは、刃を止めることができなかった。
 バリアと刃が放つ光。それは混ざり合いまるで液体のように溶けて、なくなっていく。
 刃は、かんたんに発生機と荷台を両断した。
 光の範囲が徐々に広がっていく。
 しかも、広がるスピードが速まっている。
『ディミーチ自身がバリア・ブリーチングのプロなのもあるが、覚えておけ。このようなバリアは、同種のバリアを扱う技術があれは容易に中和できる』
 たちまち、すべてのバリアがディミーチに溶かされ、消えていく。
『カーマとディミーチは、たんぱく質の型が地球人やチェ連人とは違う。
 いつも、自分たちの食事が皆の重荷になっているのではないかと気にしていたな』
 再び防衛隊の銃撃が止まった。
 止めたのは目を開けていられない閃光と、バリアが焼失したという事実。

『この隙に我は降下した。同時に戦車形態へ変形する』
 戦闘機特有の鋭い先端や翼が、体内にしまわれていく。
 機体そのものも折れ曲がり、前半分が後ろ半分の上にのった。
 下になった半身から、下面全体を動かせる4列の無限軌道が飛びだした。
 同時に、4つの青白いジェットが下へ噴きだした。
『今使っているのは、2対のプラズマシェットエンジン。核融合炉から力を得る。
 戦闘機形態なら前方から吸引する空気、宇宙ならあらかじめ積んでいたロケット燃料をプラズマ化させ、後方へ噴射する。
 この時はエンジン内に残っていた空気をプラズマ化させ、強引に前後から噴射、落下速度を緩めている』
 そして、敵のど真ん中に着地した。

『エンジンは体内から取り出すと、上の砲塔へ移す。
 そして2門の主砲に変わる。その砲弾は何万度ものプラズマ。それと長距離用のビームだ』
 全長20メートルの戦車形態。
 陸上自衛隊とPP社がもつ10式戦車の全長は9.42メートル。
 
 この時になって、初めてオルバに銃弾が放たれた。
 その弾は地域防衛隊と同じ、青い輝きのバリアに阻まれた。
『あきらめるな! 一気に押し切るのだ! 』
 防衛隊から、そんな叫びが聞こえた。その声とともに、攻撃が激しさを増した。

 凄まじい光景だ。
 だが、オルバの話には恐怖感がない。
『先ほど我々の作戦計画と言ったが、概要は我が立てた。
 本来なら生徒会長と副会長がトップに立つべきなのだが。
 会長の息子、クミへの配慮だ。
 母親であるユニバースと、なついている巌に、そんな血なまぐさいことはさせたくない。という意見が相次いでな』
 ドラゴンメイドが付け加える。
「オルバさんが真っ先にそう言ったんだよ」

 オルバ戦車の各所にある、小さなハッチが空いた。
『この時のための急襲チームを出す。我が生徒会から選抜した』
 オルバのすぐそばで、一つの人影が突然膨らんだ。
『環境美化委員会長、ティモテオス・J・ビーチャム。
 彼は身長3メートルの怪力巨人に変わる』
 目の前の大型トラックの荷台に向かう。
 そこには重機関銃がすえつけられ、次々に重い鉄の玉を高熱高温で吹き付ける。
 だがそれは、ティモシーの両腕が動くたびに、あえなくはじき落とされる。その両手には、赤い装甲が施されていた。
『ユウ メイメイから、ロケットで加速するガントレットを与えられた。
 ティモシーでは対応できぬ超音速弾にも自動で反応し、防御する』
 最後の足の動きも重ねた鉄拳。これはティモシー自身が放ったものだ。
 重機関銃はあえなく砕け散った。

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


『あの、質問があります』
 ウルジンの黒い手が、まっすぐに上がった。
『先ほどプレシャスウォーリアー・プロジェクトは生徒会で行う作戦計画だとありましたが、真脇 達美はその中に含まれないのですか? 』
 凛々しく、しっかりとした声だ。
『レイドリフト・ドラゴンメイド。変身している時はそう呼んでください』
 本人からの忠告。
 そしてオルバイファスからの答え。
『確かに、真脇 達美、生徒会の魔術観測装置も作戦に組み込まれていた。
 だが、今の状況が始まったのは、予測できない要塞からの砲撃からだった。
 真脇はそれに対し、自衛のため反応し、それ以降はレイドリフト仲間と行動を共にしている。
 突発的に対応したのは分かるが、作戦にしたがわなかったのは咎められるべきだな』
 そう聴いてドラゴンメイドは、「ごめんなさ~い」と、全く反省していない声で頭を下げた。
『そう思うなら、答えてもらおう。
 ポルタの隙間から見えたぞ。お前の乗る車の表面に付いているのは、シート状のカメラだな。
 お前は異常物理を見ることができる。
 それで見えるのか?
 召喚者が放つという、メイメイが言っていた魔法は? 』
 その質問には、自身に満ちた声で答えた。
「Negative! 見えません! 」
 おちゃらけたところは全くない声。 
 チェ連のエリートたちは悟った。これは偶然ではないと。

「わたしからも質問があります」
 次に手を上げたのは、シエロだった。
「プレシャスウォーリアー・プロジェクトは生徒会が、召喚者の要望を受けて作ったものだと思っていました。
 もし召喚者にしたがわなければ、異世界に飛ばされるかもしれない、とも聞いています。
 なのに、ドラゴンメイドは勝手に動いていました。
 あなた達を見ていると、彼女の独断専行を黙認しているように見えます。
 本当は、召喚者が魔法を使えないと、解っていたのではないですか? 」
「それには、僕が答えましょう」
 意外なことに、言い出したのはワイバーンだった。
「ドラゴンメイドは、こう見えて特殊合金ボルケーニウム製なのです
 ボルケーニウムは、魔術のように、その次元の通常物理ではありえない現象を受けても、エネルギーに変えて吸収してしまえるのです」