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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 6話から10話まで

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 豊奴が、遠い目を見せる。
『確かに、あの子には、チャンスかもしれませんねぇ』と頷いてみせる。
2階からシャンシャンと規則正しく鳴る、巫女鈴の音が聞こえてくる。
『それにしても頑張りますねぇ・・・一向に止む気配がありません』
豊春が鈴音の響いてくる天井を見上げる。

 2階では、疲れきった清子が大の字に寝転んでいる。
放り出された巫女鈴に、たまが飽きもせず、ちょっかいを出し続けている。


 『あんたも子供だねぇ。そんな鈴で遊んで、一体なにが楽しいの?』


 ミイシャが、不思議そうに小首をかしげている。
子猫の成長は早い。
初めてやって来た時は、清子に抱かれて2階まで上がって来たのに、
いまは軽々と垣根を超え、ひさしを伝い、楽々と清子の部屋までやって来る。

 『別に遊んでいるわけじゃねぇ。こいつは清子のための子守唄だ。
 こいつは、この音色を聞いていると、気持ちがよくなって眠くなるらしい。
 昔から、寝る子は育つというだろう。
 睡眠は大切なんだぜ』

 『でもさぁ。本番はまもなくでしょう。
 少しは本気で練習をしないと、まずいんじゃないの?。
 巫女の衣装は一人前でも、肝心の舞が下手くそじゃ、目もあてられないわよ」

 『笑ってごまかすのも、芸のうちだろう。
 肝心なのは、人様の前に立つという強い決意だ。
 舞台度胸というやつは、そうした決意から産まれてくるそうだ。
 こいつ。練習不足でも平然と本番の舞台に立てそうな根性をしている。
 清子は案外、大物かもしれないぜ』


 『無邪気な顔で眠っているもの。たしかに大物かもしれません。
 で、どうすんの?。あたしたちのデートは。
 鈴をいつまでも、シャンシャン鳴らしていたのでは、何時までたっても
 デートなんかできないわ』

 『あわてなさんな。後でたっぷり可愛がってやるからさ。
 とりあえず明るいうちは、お上品に過ごそうぜ。
 天気はいいし、陽気も良くなってきた。慌てて事に及ぶ必要もなさそうだ』

 『ば~か。どうしてあんたは子猫のくせに、あたしの顔を
 見るとやりたがるの。
 なんだかあたしまで、清子につられて眠くなってきました・・・・
 じゃあ、お楽しみの今夜にそなえて、ひと眠りしょうかしら、
 ふぁあ~』


 『な、なんだよ。お前まで寝ちまうのかよ。
 それじゃ誰が見ても、おいらがただのバカに見えるだろう。
 1人で鈴をシャンシャン鳴らしながら、ひたすら起きているだけのおいらが。
 おい、寝るなよ。別に今から楽しんでも、べつに構わねえんだぜ、おいらは』


 『そうねぇ・・・でも今は遠慮しておく。
 やっぱり、眠くなってきちゃったんだもの・・・・うふん』


 『女というのは、場所も選ばず、よく寝る生き物だなぁ。
 まぁいいか。オイラもなんだか眠くなってきたぜ・・・』

(11)へ、つづく