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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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あなたが残した愛の音。

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第3章 昼休みのピアノ



「僕が中学2年の春に、音楽の授業に川島先生が来られたんです」
 博之は照れ隠しに、少し目を細めた。
「先生に対するクラスの男子の第一印象は、“かわいい”っていう感じでした。僕たちより10歳離れていたんですが、小柄で髪型が当時のアイドル風だったので、生徒から親近感が沸いて、みんな“ひとみ先生”と呼んでいました。僕はバスケットボール部の先輩から、『ひとみ先生の担当のクラスか?』と聞かれて、学校中の男子が、この先生の虜になっていることを知ったくらいです」
「・・・・・・」
「僕もご多聞に漏れず、先生のことを好きになっていきました。でも、もちろんそれは、思春期の男子の単なる憧れでですよ。へへへ。お母さん、本当にかわいかったんです」
愛音は、少し微笑みながらその話を聞いていた。

「あいのさんは、大人っぽく見えますね」
「もう社会に出て、4〜5年経ちますので」
「そうですか。じゃ、あれは、お母さんがもっと若い時の話だ」

 当時まだ、女子と付き合ったことが無かった博之でも、クラスの女子やクラブの後輩から、バレンタインデーにたくさんのチョコレートをもらい、自分はモテるという自覚があった。しかし、本命の女子から告白されることは無く、他の誰かと付き合うというのを躊躇しているうちに、女子の間で博之の取り合いが始まり、さほど興味も無い女子から強引に誘われたり、プレゼントを渡されることに、嫌気が差してきていた頃だった。

「僕、先生に告白したんです。あっはは。でもそれは冗談めかしくでしたけどね」
「その時、母はどうしたんですか?」
「みんなと一緒に笑ってて、どうってこと無かったですよ」


・・・・・・・・・・
「俺、先生のことが好きです」
 ゴールデンウィークが終わった頃だったろうか、音楽の時間に博之が立ち上がり、こう言った。突然の告白も、笑いで流される程度の雰囲気の中での出来事だったが、博之に付きまとう女子生徒への、当て付けの意味が大きかった。しかし、このことがきっかけで、博之はひとみ先生が自分に、特に親しく接するようになったのを感じた。博之は、本心からそう言ったのではなく、その場のノリと、ほんの少し他の生徒より、ひとみ先生に注目してほしいと思うぐらいのことだったが、言葉とは恐ろしいもので、そう言ってしまうと、その先生に対し「かわいいな」ぐらいの気持ちだったのが補強され、それ以降、「好きでたまらない」という感情に変化してしまった。