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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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あなたが残した愛の音。

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エピローグ



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 夕焼けの太陽が山際にかかり、病室の壁がオレンジ色に染まる頃、愛音と秋日子が戻ってきた。

「きゃーははは」
秋日子は買い物袋を持って、嬉しそうに愛音に抱っこされている。

「ああ。そんなことしたら、お姉ちゃんが重たいだろう」
「お姉ちゃんが、抱っこしてくれるって、言ったんだもん」

 そして秋日子が、部屋中に漂うカサブランカの香りに気付き、鼻を高く突き出して匂いのもとを探すと、ひとみはそれを見て楽しそうに笑った。

 博之は、愛音に微笑み、秋日子から買い物袋を受け取った。それからも秋日子は、椅子に座る愛音の膝の上に、抱っこされたまま過ごした。

「先生。今日はもう一つ、見せたい物があるんです」

 そう言うと博之が、ベッドの上に大きなバッグを持ち上げて、中からあるものを取り出した。

 夕日に照らされたそれを見て、愛音は思わず息を呑んだ。

 そしてひとみは、恐るおそる両手を伸ばした。無くした過去に再び巡り逢えた気がして、まるでシャボン玉を掴まえる時のように、そうっと。


「覚えていますか?」

「あぁ・・・。もちろん覚えているわ」


『103』


 ひとみは、薄れかかった数字を見つめて、再び目に涙を浮かべた。

 そうして、その“103”(ヒトミ)ボールを、ベッドの上で、いつまでも抱きしめていた。



          終



あとがき


BGMには『別れの曲』を。。。

本作を、あの日の先生に捧げます。