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尖閣~防人の末裔たち

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「老婆心ながら確認だが、中国海警の船舶はいまだ我が国の漁船を妨害して領海侵犯中ですか?」
倉田は「妨害」という単語の語気を強めた。
「その通りです。残念ながら彼らを放置せざるを得ません。「うみばと」乗員の生命を優先します。」
兼子の回答は、苦虫を噛み潰したかのように歯切れが悪いものだった。
-放置する訳にはいかんだろう。。。そこまでして息子の命を守ってくれるとは。。。丁度那覇からP-3CのTIDA03が来ている。「うみばと」の代わりに上空で警戒させよう。。。-
倉田は、口元に笑みを浮かべると、
「了解。「うみばと」の飛行支援のためP-3Cを救助に向かわせるがどうか?」
無線を傍受されると上げ足を取られるおそれがあるため、倉田は「救助」という言葉を強調した。兼子も無線に配慮してくれればいいが。。。
「。。。了解!P-3Cにも救助を要請します。」
先ほどまでとは打って変わった兼子船長の明るい声がスピーカーから流れる。倉田と同じく「救助」という単語を強調しながら。。。笑い声すら聞こえてきそうな声だった。
今、倉田の息子である昇護の「命」というバトンを繋ぐリレーが始まろうとしていた。領土拡大の野心に燃える中国の牙の隙間を縫うように繋げなければならない命のリレー。それが今、海上保安庁と海上自衛隊という組織の枠を超えることで動き出したのだ。
静かにマイクを戻した倉田は、自分の胸が熱くなるのを感じた。
「昇護、頑張れよ。みんながお前の命を救うために思いを一つにして最善を尽くしている。頑張れよ
。。。」
倉田は、強く念じた。握った拳に汗が滲んでくるのを感じながら。。。

作品名:尖閣~防人の末裔たち 作家名:篠塚飛樹