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尖閣~防人の末裔たち

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 悦子が顔を上げ、古川の表情がまた怪訝そうに曇った。
「あの、写真、、、もう4年前になるかな。。。俺が古川に渡した、えっちゃんが不倫相手と一緒に写っている写真。。。あれを撮ったのは、俺じゃあない。。。」
 古川はキッと権田を睨み、悦子は、すがるような眼差しで古川を見た。
 もうこれ以上私を嫌いにならないでせっかくまた会えたのに。。。悦子の目が訴える。 
「すまない。。。あれは、探偵が撮ったものだ。。。俺が雇った探偵が。。。」
 権田の目に涙が溢れているのを古川は見逃さなかった。あの権田さんが泣いている。
「なぜ探偵を。。。」
 古川は、今出来る最大限の冷静さを保って問い掛けた。本当は怒りで爆発しそうだが、権田の涙に、僅かに残った古川の自制心が反応する。最後まで、聞け。
「お前が社を辞めたことで、俺は、お前という相棒を失った。でもフリーランスとして仕事を続けるというお前をおれは全力で応援した。またお前と仕事をする機会もある。。。俺は喜んだ。しかし、お前はえっちゃんの実家の会社の問題を抱えていた。二足のわらじでは、うまく行くはずはない。ましてや、フリーランスの世界は甘くない。しかも、お前は、えっちゃんが浮気疑惑で精神的に不安定な状態にあった。だから、一気にケジメをつけさせて、お前をこっちの世界に戻そうと俺は企んだんだ。
 お前を腐らせるのは勿体ない。という一心でな。。。結果として君達は離婚して、お前は、この道で成果を上げていった。俺はずっと複雑な思いでいた。。。これで君達は幸せだったのだろうか、と。。。」
すまない。。。権田は土下座していた。
 古川はそっと、悦子に目を遣ると、悦子がしゃくり上げて泣き始まった。。。
「権田さん。。。そこまで俺の仕事のことを。。。離婚のことは気にしないでください。俺は浮気をしたことに目をつぶることも、許すこともできない男です。遅かれ早かれ、離婚していたでしょう。それは、俺と悦子の問題なんですから。。。これからの作戦を考えましょう。」
 権田の腹の内を明かされた古川は、心が晴れる想いがした。もう怒りや不信はない。。。これからどうするか?が肝心だ。河田に対しても、そして悦子に対しても。。。
 古川は、泣き崩れた悦子に歩み寄ると、その肩に優しく手を置いて
「ごめんな。大丈夫か?」
 今出来る最大限の優しさを言葉にした。
「うん。」
 さらに込みあげてきた想いに、それ以上は声にならない悦子は、だまって古川の肩に額を預けた。
 その頭を古川の手が優しく撫でた。
 ずっとこのままでいて。。。
 懐かしく、心地よい感覚に安心感が広がり、少しずつ心の波を穏やかにしていくのを感じながら悦子は心の中で呟いた。。。本当は声に出して伝えたい言葉だったが、それは出来ないことを悲しいくらい悦子は知っていた。。。それだけ理性のある女に成熟した自分に驚き、そして後悔しながら。。。

作品名:尖閣~防人の末裔たち 作家名:篠塚飛樹