赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 1話~5話
「これ。そこのお前。
ちょいとお待ち。お前が春奴姐さんところへ来た清子かい?。
せっかくの着物じゃないか。
2の足をあらわに見せて駆け回るなんて、恥ずかしくないのかい。
困ったもんだね、近頃の赤襟は。
着物の裾からチラリと、初々しさが見えるから可愛いんだ。
それを露骨に脛(すね)まで見せたら、育ち盛りの10歳のガキと同じだ。
見ていて行儀悪いったら、ありゃしない」
「あら。そういうあなたは・・・
どなたかと思えば、伴久ホテルの若女将さん!。
ウチの『たま』が、朝から出たままなんです。
お母さんに言われて、たまの行方を探している最中です」
「たま?。三毛猫の、たまのことかい?。
下駄をカラコロさせて街中を走り回ったって、無駄だ。
だいいち。悪戯さかりの子猫は、あんたなんかにゃ絶対に捕まらないさ。
子猫の行動範囲は、せいぜい広くて50m四方。
あんた。
ちゃんと宛(あて)があって、子猫を探し回っているんだろうねぇ。
闇雲に走り回っても見つかりませんよ、絶対に」
「そうなんですか・・・
見つからなかったらウチが困ります。
うち。午後から、踊りのお稽古が入っているんです。
でも、踊りが苦手なんです、うち。
いつまでたっても不器用で、覚えが遅すぎると、おっ師匠さんに
怒られてばかりです。
それなのに遅刻までしてしまったら、おさまりが付きません。
果てしなく怒られて、こんどこそ、絶対に、愛想つかされてしまいます」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 1話~5話 作家名:落合順平