年賀 未来のお正月
僧侶の言葉に、櫻澤音々は目の前が真っ暗になりました。悲しくて、悔しくて、みじめな気持ちになり、しゃがんで声を上げて泣き出しました。
「何で、何で私がこんな目に遭うの?私は普通に暮らしてるのに…」
僧侶は、泣き崩れる櫻澤を見ながら言いました。
「娘よ、思い出してみなさい。おぬしは以前、地方で台風の犠牲になった高齢者たちに対してどんな言葉をかけたかを」
彼女の頭の中で、あの日のことが少しずつプレーバックされました。「人生の卒業」、「自分には関係ない」…、冷たい言葉を吐いてきました。
「おぬしがしたことは、死者に唾を吐くのと同じことじゃ」
櫻澤は、何も言い返すことができませんでした。未来のお正月の僧侶は、少しだけ厳しい感じで言いました。
「それでも、改心しないかね?」
櫻澤は、必死に首を横に振って、声を絞って言いました。
「弱い人たちに優しくしなかった者が、いかに悲しい結果に終わるかが分かりました。これからは弱い人に優しくします。だから、だからお坊さん、未来のお正月を暗くしないで!」