年賀 未来のお正月
そうこう話していると、後ろのほうから、2人の男が話す声が聞こえてきました。
「知ってるかい?髪も手も脚も長い、それは美しい女が死んだんだってさ」
「へえ〜。そりゃまた、何でだい」
「何でも、あの台風の日に外に出たんだそうだ。んで、濡れたタイルの上で足を滑らせて頭ぶつけて、打ち所が悪くてあっさり人生卒業、ただそれだけの話さ」
「そうかね。死んだのかね」
「そうだよ。ちなみに、聞いた話だと、その女の遺体に派手に唾を吐いたり、さらにはごみをその上にぶちまけたやつも居るそうだ」
「ふ〜ん。で?」
「誰にも死を悲しまれないやつが居るってことだ。ま、俺たちにゃ関係のないことだけどな」
「違いない」
2人の男は、話しながら去っていきました。
櫻澤は、男たちの話を聞いていて、少しイライラしました。
「死んでも悲しんでもらえない、それどころかあれほどひどいことをされた人って、いったい誰なんですか」
未来のお正月の僧侶は、彼女をぎろりと見つめました。
「知りたいかね?」
彼女はうなずきました。
「本当に、知りたいかね?」
彼女は、震えながら二度うなずきました。僧侶は、険しい目つきで櫻澤を見つめると、言いました。
「櫻澤音々、おぬしのことじゃ」