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心霊探偵☆藤村沙織の事件簿

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「あっ所長、先ほどから依頼人がお待ちかねですよ」
 雑居ビルの二階にある事務所へ入るなり、助手の沢田くんにそう言われた。ついでに鼻をつまんで手をパタパタされた。
「うわ酒くさっ。また二日酔いですか、いいかげん徹夜で飲むのヤメてもらえませんかね」
 若造のくせに小言が多い。
 なにか言い返してやりたいところだが、まあよし。鏡のまえですばやく化粧をチェックする。
 なんたって、ひさしぶりの仕事だもんねルンルン。
 パンツスーツのしわをのばし「応接室」とコピー用紙を貼りつけたドアをあけた。
 あん?
 すぐにしめた。給湯室にいる沢田くんを手招きする。ティーカップにお湯をそそいでいた彼は、ヤカンを持ったままトコトコやって来た。
「なんすか?」
 小声でささやく。
「ちょっとォ、なかにいるの子供じゃないのよ」
「たぶん中学生くらいだと思います」
「まさか、あの子が依頼人じゃないでしょうね」
「そうですけど」
 沢田くんは意に介さぬといった様子ですぐに給湯室へ戻っていった。その背中に向かってたずねる。
「……てことは、もしかして裏稼業のほうの依頼かな?」
 背中はこたえた。
「さあ、ちょくせつ訊いてみてください」