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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅵ

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(第六章)ブルーラグーンの戸惑い(4)-ライバルとの対面②



 吉谷から顔を背けるように下を向く美紗の隣で、大須賀はますます興奮気味に、早口で喋り続けた。
「日垣1佐、一人暮らしだったんだあ。それで『奥さん代理』って話になったんですね。そういうことは、早く教えてくださいよ」
「私だって、『奥さん代理』の件は、昨日の夕方に聞いたんだから」
「違う、違う。単身赴任してるって話。そうと分かれば、こっちのアプローチも変わってくるじゃないですか」
 美紗は、ますます声が大きくなる大須賀の横で、凍り付いた。豪胆な「ライバル」は、やはり、相当に気合が入っているらしい。
「やだ、変な方向にいかないでよ」
 吉谷が不愉快そうに眉をひそめるが、大須賀に先輩の言葉は全く聞こえていないようだった。
「取りあえず、そのレセプションから攻めようかな。吉谷さんは、あくまで個人宛に来た招待状で出席するんでしょう? つまり、日垣1佐の『奥さん代理』のポストは、まだ空いてるって解釈できるわけだし、二人で付き添ったって別に構わないわけだし……」
 大須賀は一人でブツブツ呟くと、突然、美紗のほうに向きなおった。
「ねえっ、鈴置さん!」
 美紗が飛び上がりそうに驚いて顔を上げると、完全にテンションの上がった「ライバル」は、ピンク系のアイメイクがバッチリ決まった目を大きく見開き、椅子ごと体を寄せてきた。
「忙しいトコ悪いけど、日垣1佐にお伺い立ててくれないかなあ? 『奥さん代理』に8部の大須賀恵が立候補しますけど、追加の付き添い、いかがですかって」
 私もそれを狙ってたのに、と言いそうになって、美紗はすっかり動転した。金魚のように口だけを動かしながら身を引いたが、大須賀はなおも、派手な顔とボリュームのある胸を近づけてくる。
「私、吉谷さんほどじゃないけど、向こうにちょっとだけ留学してたことあるから、フランス語はそこそこできるし、知らない人と話すのも全っ然平気だから。大物だろうが何だろうが、日垣1佐に寄ってくる変な奴いたら、アタシが盾になってあげるわ。どう? 適任よ!」
「ちょっと、美紗ちゃん困ってるじゃない。だいたい、女子会はどうしたのよ」
 吉谷が暴走気味の大須賀を美紗から引き離そうとしたとき、険のある声が三人の間に割り込んできた。