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Many thanks~詩集 紡ぎ詩Ⅷ~

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くるくる
ランラン
ラララーン
観覧車が回り
メリーゴーランドが走る
それは妖精たちの楽しい時間
もし真夜中にふっと目覚めて眠れないときは
あなたも妖精たちといっしょに
遊園地で秘密のパーティーを
しませんか?
そう 明日の夜あたり
きっと招待状が届くはず

☆「あなたの名前は何ですか?」

ーあなたの名前は何ですか?
思わず声をかけたくなる花 
寒風に身を震わせながらも
すっくと前を向いて立つ
白く気高き花一輪
清らな乙女がはにかみながらも
凛と微笑むのにも似て

ご覧あれ
無心に咲くことの美しさを
打算なき努力の尊さを
自然が見せてくれる一瞬
心からの畏敬を抱かずにはいられない

初冬のある朝
私は彼女に問いかける
ーあなたの名前は何ですか?

☆「冬の花、春の花、四季の花」

 小説の最新作がようやく完成した。去年の夏から書き始めた長編の第5話である。私は物語の小道具として、季節の花を使うことが多い。詳しく言えば、花言葉をキーワードとしてストーリーを展開させていくのである。
 今回の作品は、椿がキーモチーフとなった。椿は椿でも、紅椿だ。真冬、寒風に揺れる艶やかな深紅の椿を思い浮かべて頂きたい。小説の舞台は実在する韓国の済州島をモデルにした架空の島である。済州島のカメリアパークは、観光名所ともしても知られている。
 キーワードは、紅椿と雪。寒椿のうっすらと雪をい戴いた情景、温暖な地に住んでいる私にはまずお目にかかることはできないのだが、思い浮かべただけで心の琴線を揺さぶられるようだ。
 この作品を書くまで、私は椿と言えば、冬の花であると考えていた。執筆時、作品の舞台と実際に自分が生活している現実世界の季節が一致するとは限らない。むしろ、真夏に真冬の作品を書いたり、真冬に真夏の作品を書いたりすることの方が多い。そのため、たまに両者が一致すると、作者は何かもう物凄い得をしたような気分になる。
 そんなわけで、最新作の季節は冬であると一人で思い込んでいた。リアルな世界では、折しも春である。桜がいよいよ満開になろうとする季節であった。コロナ禍以来、いわゆる花見の観光名所にはいかず、自宅で花見を楽しむようになった。幸運なことに、我が家には見事な桜がある。今年も桜が6分咲くらいになったところで、早々と娘たちと花見弁当と洒落込み、桜の美しさを堪能した。
 その数日後、いよいよ執筆に取り掛かった。桜の季節は、前回の作品で描いたから、今回は少し季節がずれるなぁと思いながら、パソコンに向かっていた。ある程度執筆が進んだある日、庭の片隅で紅椿が鮮やかに咲いているのが目に入った。 
 まさに、作品の中で艶やかに咲き誇る椿のイメージだ。物心ついてから、数十回となく見てきた光景のはずだが、なぜかこの時は、椿の咲く一角だけが突如として、視界に飛び込んできたような感じだった。
 季節は4月の上旬である。桜もこのときにはほぼ満開を迎えていたから、まさに百花繚乱、春の盛りといえよう。これまで椿は冬の花だと認識していたけれど、春も盛りに咲いているのだから、満更、冬の花とばかりも言えない。
 もちろん、一口に椿といっても、様々な種類がある。早咲きの椿もあれば、遅咲きの椿もあるだろう。私は花のことにはあまり詳しくないので、その辺は言及しないが、ご容赦願いたい。
 この瞬間、私の中の椿に対する認識はかなり違ってきた。椿は一概に冬の花と決めつけられないのかもしれない。作品が何とか完成し、今、暦は既に4月の下旬に入っている。さすがにもう艶やかに咲き誇っていた紅椿も全て散っている。
 冬の訪れとともに花開き、春の訪れとともに散るーそれが椿の運命であり、一生なのかもしれない。桜が散り椿が見当たらなくなってしまった庭では、既に初夏の訪れを告げるイチハツが純白の清楚でありながらも、存在感がある大輪の花を咲かせている。
 花はただそこに存在するだけで、その美しさで心を癒やしてくれる。私としては、花の定義よりも花の美しさを素直に愛でたい気持ちである。

☆『初夏の庭~母と娘』

うっすらと色づき始めた紫陽花が
初夏の気配を伝えてくる
庭の樹々たちは艶やかに健やかに萌えいで
全身で生命の輝きと歓びを語りかけてくる

今日 高齢の母と久しぶりに出かけた
車を運転するのは夫だ
二年前 長女が嫁に行き随分と寂しくなった我が家だが
一年前 長男が数年の修行を終えて高野山から帰還した
家族が一人減り
また一人増えた
ー私がおらんようになったら、あんたも寂しゅうなるでえ。
母のいつもの口癖が始まった
ー当たり前じゃが。今でも一番信頼できるのは、お母さんじゃけんな。
私もまた同じように返す
車に乗る前 母が緑眩しい庭に眼を細める
ー緑が綺麗じゃなあ。
ーそうね、今が一番綺麗な時期じゃろうね。もう少ししたら暑くなって、樹も元気がなくなるから。
と私。
こんな風になにげない風景を共に眺め語り合うひとときが
無性に愛おしく貴重なものに思える

今年 母は九十歳になった
ー意地悪婆さんじゃから、まだまだ生きるよ。
あるときは強気な笑顔を見せたかと思えば
ー来年の今頃、もう見慣れた部屋の天井を見ることもないかもしれん。
あるときは溜息交じりに呟く
父はもう四十年も前に亡くなった
母は父の分まで頑張って生きてくれたのだろう
母がいなければ 私は天涯孤独になる
判っているからこそ ずっと元気で側にいてくれたのだと思っている
娘としてのホンネをいえば
自分の親には一分一秒でも長生きして欲しい
歩き出した母の影が長く地面に伸びている
その影を守るように私も背後から歩いていった