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レイドリフト。ドラゴンメイド 第23話 嵐の誓い

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 生徒会内から反対意見はありました。武器を配れば、その分コントロールできない戦力が増える。
 その結果、戦いがさらに激化するのではないか?と】
 目の前の先輩パイロットの目は、真っ赤だ。
 口は叫びたいのを我慢しているのか、深いしわが刻まれている。
 後の者達も、同じ顔をしていた。
 そんな顔、しなくていいのに。とドディは思った。
【結果を見ますと、目的を果たせたと思っています。
 生徒会も、この街の人々に感謝しています。
 私もそう思います。
 これだけ違いのあるメンバーで構成されたグループを受け入れるなど、なかなかできることではありません。
 だから一度は敵対しても、仲間になれると思ってますよ。
 あなた達もそうでしょ? 】
 ボルケーナは振り向いた。
 ドディも、レミとハッケも、しっかりとうなづいていた。
 駐車場ではフーリヤが。

 これでもう、荒々しい自分を演じなくて済む。
 ドディは安心して、このまま寝たい気持ちになった。
 だが。

【そうです……そうですとも】
 隊長は、最初は絞り出すような声で、それからだんだんと力強く答えた。
 涙をこらえ、さらに強まった恐怖を我慢するように。
【宇宙帝国の糞どもや、3種族のバカどもは、我々の生きる権利を奪ってばかりだ!
 あの薫り高いマトリクスの栄光も知らない鬼畜ども! 】
 隊長は、腕を振り回し、足を踏み鳴らして悔しがった。
【そうだ! 】
 立ち上がる人がいた。
【我々の地は、かつて創造力と実行力にあふれた、未来を作る楽園だった! 】
【それの価値を分からぬ鬼畜ども! 】【宇宙人がふざけるな! 】【あいつらが勝手に怖がるから戦争になるんだ! 】
 また新たな声。今度は女性が。
【あたしたちをまともにあつかえ!
 怖がるなんて、バカのすることだよ!! 】
 誰もかれもが立ち上がった。
 そして次々に異星人や3種族を詰り、怒り、あざける。
 彼らの視線は激しく揺れ動く。
 やがてボルケーナに止まった。
 希望や強い意志を込めて見据えたわけではなかった。
【もう、奴隷でいいです! いえ、奴隷にならせてください! 】
【僕も! 奴隷になりたいです! 】
【奴隷になれば、あなた達の元で我々は働く!
 命さえつなげられたら! それで十分です! 】
 幾多の悲鳴が重なり、それは疫病のように広がる。人々は恐怖をさらにあふれさせる。
 行うべき手段も、掲げるべき希望も見えず、その心はさまよっている。

 叫びの数に反比例するように、ボルケーナの顔から色が抜けていく。
 生徒会は思い出した。あの時と同じだ。
 チェ連が突如攻撃を始めた時も、こうだった。
 ボルケーナが行うべき手段も、掲げるべき希望も見えず、おびえ、考えがまとまらない時の表情だ。
【なんなりと御命じください! 】
 最後にかけられた言葉。
【応隆さんと結婚させてください】
 ボルケーナは反射的に反応しただけだ。
 すると、外からスピーカー越しの声がした。
『はい』
 最後の二言に、その場にいた全員が口を止めた。
 そして視線が、外に立つ緑と茶のまだら模様に集まる。
 高さ5メートルほどの、人の姿に。
 その下半身は敵を向いていたが、上半身は建屋を向き、頭のカメラは建屋内のボルケーナにしっかり合わせてあった。

【ギャー! ギャー! 】
 誰かが叫んだ。もう狂ったとしか思えない、壊れたような声で。
【オルバイファスだ! 】
 その一言でチェ連人の視線が、生徒会やボルケーナ、応隆やヘリより上に移った。

 彼は、音もなく、なめらかに滑空してきた。
 天から鋭い切っ先を振り下ろす、黒い剣のように。
【黒い巨神だ! 】

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

 市民からの、その呼び名を思いだした時。
 シエロとカーリタースは、記憶を巡る旅から現実へ引き戻された。
 上から叩きつけられた衝撃と、轟音によって。
 振動は、例え立っていても倒れる心配のない程度。
 ましてや、ここは達美専用の装甲車、キッスフレッシュの中なのだ。
 しかも、全員椅子に座っていた。

 しかし、黒い巨神。
 その一言だけでチェ連人ならその姿を思い浮かべる。
 そして、確信めいた恐怖が、心に湧き上がるのだ。
(彼が攻めてきた)