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てっしゅう
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「歴女先生教えて~」 第十六話

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美穂の授業が始まる。

「起立!礼」

「おはよう。着席して」

美穂は加藤と高木をチラ見した。二人とも神妙な顔つきになっていた。「おや?」と一瞬感じたが、その疑問は予想できたことでもあった。

「今日は、奈良時代から平安時代への変化について勉強したいと思います。おさらいすると、645年に乙巳の変(いっしのへん)があって政権を蘇我氏から天皇家が奪還しました。その後天皇を中心とした政治体制が確立し、それを支えた藤原氏が外戚となる婚姻を繰り返して、良い意味で天皇を支え、悪い意味で操っていた時代が続きます。やがて平和が続くと天皇家は祭礼や文化事業に明け暮れ、国家を守るという役割は藤原氏やその他の貴族に任せるようになるの。その藤原氏たちも官僚として奉仕するだけにとどまらず、悪知恵を出して私腹を肥やすようになってゆくの。どうしてそうしたのか解る人?」

「先生!」

「では渡辺くん答えて」

「はい、荘園ですね。彼らは自らの庭と称して荘園内で稲作をして、一定の税だけ納めるというやり方で、どんどん私有地を増やしてゆきました」

「そうね、奈良時代に成立した墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいのほう)によって、荒れ地を開墾したものにはその土地の所有を認めるという制度が出来た。それまで開墾しても土地の所有権は天皇家にあったから、誰も一生懸命に開墾しなかったけど、この制度で地方でも豪族や寺社は開墾を推し進めた。特に強大な権力を持っていた藤原氏や奈良東大寺、興福寺などの寺は争い合って開墾し始めたのね。やがて気が付けば天皇家の領地は少なくなっていて、収入が減ったから建物が壊れていてもまともに修理さえ出来なくなってしまうの」

「天皇家はどうしたのでしょう?」

「そこよね。気が付けば藤原氏に根こそぎ持って行かれていたから身動き取れなくなったのよね。おまけに摂政・関白などと言う制度を作られて、政の決定権まで奪われたの。戦おうにも兵力もないし、財力もないからあきらめておとなしくしているしかなかったと言う事ね」

「藤原氏は天皇にとって代わろうとしたのですか?」

「いい質問ね、渡辺くん。天皇というのは神の子孫だから、その血が流れていないとなれないということが大前提なの。それは昭和まで続いてきた日本人の常識だったの。だから、政権を奪うことが出来ても、地位までは奪えなかったの。明治政府になるまで藤原氏は政治の裏方で暗躍してきた。武家政権に腹立たしさは感じていても彼らには天皇にとって代われないという絶対的な安心が残っていたから耐えられたのよね。現実に室町幕府も鎌倉幕府もそして徳川幕府も天皇を廃絶しようとはしなかった。出来なかったという言い方が正しいけど」

「本当に神の子孫なんですか?」

渡辺のその質問は多くの日本人が感じることではあったが、イエスキリストの復活や、釈迦の涅槃などの様子を疑うことが無いように、我々は千何百年の間、そう学習してきたことでもあった。