レイドリフト・ドラゴンメイド 第22話 見損なったのか?
同時に、2機のロボットの腹に、白くまばゆい光が生まれた。
レーザーは鉄おも溶かす。
だが、ロボットは何も問題ないように走る。
ミサイルなどの小さい物ならともかく、分厚い装甲をレーザーで溶かすには時間がかかるのだ。
フーリヤにもバリアはある。
それが弾丸を空中にとどめた。
本来は、気圧が低い惑星で広げ、浮力を得るための物だ。
例えば、火星では地球の1%に満たない。
もう一機のロボットが羽で守られていない建屋の正面を銃撃した。
そこでも弾丸は止まった。
だが、このままではフーリヤが動けない。
しかし警告はできた。
『てっ、敵が来る! 川の向こうだ! 』
ドディはその言葉で、対岸に視線を向けた。
その直後、駐車場で分厚い鉄板を切る音がした。
【ドディ! まずはエイリアン・マフラーからです! 】
レミに叱られた。
そして、そんな名前だったのか。と思いだした。
もどってきたレミに横に引っ張られる。
彼女は弓全体に異能の刃をまとわせ、それでエイリアン・マフラーの左ひざ裏から切り裂いていたのだ。
さっきまで2人がいたところに、切られた足が倒れる。
エイリアン・マフラーはすぐにマフラー、2軸反転ローターを広げ、回転させる。
これも自動なのだろうか。
その飛行能力によって、倒れることはなかった。
【わ、悪い! 】
ドディが償いとしてしたこと。
まずは、未だに空中に浮き、バチバチ帯電しているレミの矢をつかむこと。
そしてローターで立つエイリアン・マフラーの、そのローターの真下へ張りついた。
ローターに回転を伝えるシャフト。
その機体に守られた部分へ、その矢を投げ込み、逃げた。
エイリアン・マフラーには、いくつか出入り口がある。
両腕を盾にできる両脇の下。
そして飛行中に脱出する背中だ。
イスにパラシュートがついていて、イスごとロケットで発射される。
この時、問題になるのがローターだ。
緊急時に回転したままでいると、どこへ飛ぶか分からない。
脱出したパイロットにあたる可能性もある。
そのため、シャフトには爆薬が仕掛けられている。
脱出時に、ローターを吹き飛ばすための物だ。
火花は導火線に火をつけ、ローターを吹き飛ばす。
ドディとレミが最後の1機に迫るころ、エイリアン・マフラーのオートバランサーは両手を後ろに伸ばし、機体をやさしく駐車場に横たえた。
残る1機。
ドディは、火を吹く重機関銃にしがみつき、揺さぶる。
【レミ! ひじを狙え! 】
ジェットをふかし、狙いをわずかにずらす。
フーリヤと建屋から斉射が外れた。
【ハイ! 】
レミの弓が、再び切れ味鋭い一撃を放つ。
弓の一撃が肘を貫き、抵抗がなくなると、ドディは銃口を思いどうりに向けることができた。
エイリアン・マフラーの人間そっくりの手。その引き金にかけられた人差し指を、蹴とばす。
狙うのは持ち主の胸。続いて上に。ローターとメインカメラを打ち抜いた。
【勝負あったぞ! あきらめろ! 】
『やった! いや、まだだ』
うれしそうなフーリヤの声。
しかし、すぐに悲鳴に変わった。
『今度こそ川の向こうを見て! 』
車の音がする。
そして家々の向こうに見える、多数のジープや大型トラック。
後付けも多いとはいえ、装甲も大口径火器も施された軍用車両だ。
今度は避難民ではない。
そのすべての銃口、砲口が、浄水場に向いている。
ドディは、赤ん坊の声を聴いたときのことを思いだした。
あの時、気をとられず周囲を見ていたら……。
だとしても、赤ん坊を責めるわけにはいかない。
敵の増援をよく見ると、青白い輝きが見えた。
【あいつ等にもバリアが! 】
焼けて崩れた瓦礫を、バリアを張る車両が押しのけている。
その車列から離れた車両は、路地へ飛び込む。
そこから、オレンジ色の光が一瞬瞬いた。
続いて響く、大砲の発射音。
その砲弾は建屋を狙ったものだ。
だが掠めた。
建屋の斜め後ろ立っていた民家の屋根が吹き飛んだ。
【また、自分の街を! 】
砲弾は、その数を増す。
建物の影から次々にオレンジ色の火が飛びだし、空気が抵抗する音がいくつも重なった。
作品名:レイドリフト・ドラゴンメイド 第22話 見損なったのか? 作家名:リューガ