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レイドリフト・ドラゴンメイド 第22話 見損なったのか?

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新たな敵、3機の人型ロボット。
 その身長は10メートルに達する。
 色は緑と茶のまだら。迷彩柄。
 手足は四角いブロックが連なり、がっしり太く、安定感がある。
 胴体はドラム缶を思わせる円筒形。
 そして、胴体の上にはレンズ1つのカメラ。
 そのカメラと胴体の間から伸びた、上下2対のヘリコプターそのもの回転翼。
 2軸反転ローター。
 それが回転し、ロボットを滞空させ、建屋を取り囲んでいる。

 スイッチアに召喚された最初の日、生徒会らはあのロボットを見ていた。
 地球人を見たことがない。よって怪しい。
 そんな短慮な考えで、チェ連軍がけしかけてきた兵器として。
 その時、ユウ メイメイは両腕を、城戸 智慧は足を失った。
 ドディの恨み。そしてもう一つの記憶が、怒りを湧き上がらせる。
【あれそっくりのロボットが、2年前に福岡を襲ったんだ!
 間違いなく同じ構造のロボットだろう!】
 衝撃波を使いたい衝動に駆られた。
 超音速で飛ぶと生まれる、自分にまとわりつき、圧縮される空気のハンマー。
 だが、自分を頂点にする円錐形の衝撃は、建屋まで破壊するだろう。
【うおおおお! 】
 それでもドディは、建屋とほぼ同じ高さの巨人に、真っ直ぐ襲いかかる。
【まず狙うなら、カメラだ! 】
 手前の、建屋に近い2機の間に割り込む。
 両手をカメラに向け、勢いのついたジェットを放つ。
 鉄をも溶かす高温と、軽自動車ぐらいなら吹き飛ばす推力。
 だが、カメラは焼け飛ばなかった。
 その手前にあらわれた、青く輝く半透明の幕。
 その膜によって、ジェットはそらされてしまった。
【バリアか。これも2年前の奴と同じ。
 なら! 】
 3機目、狙うのは首の付け根。 
 そこを真正面に、バリアに対しても真正面に、両手を突き出し、ジェットを噴射した。
 火は届かないとは言え、ドディの推力は健在だ。
 捕らえられたバリアの発生源は、ロボットの体内にある。
 所詮は部品だ。
 ドディはさらに加速した。
 滞空していたロボットは、たたらを踏む事もなく押し倒された。
 ローターもいきなり方向を変えられ、真横への加速に使われる。
 その先は川へ。
 ロボットのかかとが、自分が撃った車を蹴飛ばした。
 続いてつま先が、街路樹もないコンクリートでU字型に護岸された川辺をえぐった。
 ロボットは頭から川へ突っ込み、ヘドロの大波をおこす。
 バリアを張ったまま落ちたため、青い幕が球形に水を押しのけた。
【どうだ! 】
 ドディは、ロボットが川に落ちる寸前で上昇を始めていた。
 両腕両足を進行方向へ向け、ジェットで勢いを止める。
 だが、急には止まれない。
 向こう岸と家々を飛び越して行く。
 その間に、下を見てみた。

 今までいたところから、川一つ挟んだだけ。
 それだけで、火災は増えている。
 サイガの雨を降らせる力も無限ではない。
 消火栓から水が出ていないからだ。
 場合によっては雨が途切れることもある。
 
 今ドディがいるところもそうだった。
 月と宇宙船が太陽の光を反射して、地球よりも明るい夜空。
 その夜空に照らされるのは、宇宙戦争の結果であることを無視してでも、石造りの町並みにふさわしい。
 だが、とドディは思う。
 派手に燃え上がる火は少ない。
 その代り目につくのは、燃焼物そのものが赤くなる、いわゆる熾火。
【たしか、派手な火より、熾火の方が熱を放つんだ】

 その時、耳に泣き声がとどいた。
 甲高い、言葉にならない叫び声。
 赤ん坊の声だ!
 思わず、声の聞こえる方を見る。

 古き良き街並み。その残滓がどこまでも続く。
 その奥に、マトリクス聖王大聖堂、チェ連風に言えば臆病者の城がある。
 上空にはノーチアサンがサメに似た灰色の姿を示す。
 その方向から、いくつもの光がの明かりがこちらへ向かってくる。
 ちらちら見えるのは、建物の陰にはいるからだろう。
 車のヘッドライト。
 軍用車ではない。
 装甲などない、民間の車両。
 1台や2台ではない。
 ものすごい数だ。
【プレシャスウォーリヤー・プロジェクト……】
 その車列から、赤ん坊の泣き声は聞こえる。
 ドディは、申し訳ないという思いから、助けに行きたい衝動に駆られた。
【あれは……いや。今はいい】
 泣き声を無理やり意識から切り離し、急いで川のロボットを確認する。
 浄水場へ戻るのだ。
【よそ見しながら戦ってるわけじゃないぞ。
 どうしても見えるし。聞こえてしまうんだ】

 不幸なロボットは、バリアを解除したらしい。
 機体は汚い黒で染まっていた。
 それでも、川の中で踏ん張り、立ち上がろうとしている。
【オートバランサーらしい。ずいぶんゆっくりだな! 】
 ロボットの背中に、亀裂がある。
 内側から外へ突き出したような亀裂。
【あそこにバリアの発生源がある! 中の発生装置が衝撃で動いた証拠だ! 】
 ロボットの腰に後ろから近付くと、すれ違いざまにジェットを横なぎにはなった。 
 狙うのは、敵のジェットエンジン。
 たちまち火の手が上がり、爆発。
 ロボットの上半身は、川辺から地上に叩きつけられた。
【ウオォ!! 】
 動きを止めたロボットの背中に張り付く。
 そして内側から膨らんだ亀裂に、ジェットを突きこんだ。
【これでバリアは張れない! 】

 ロボットは、川辺に肘を置き体を支えている。
 そのまま、ローターを再び回転させ、空に逃げるつもりだ。
 しかし、金属を2秒間連続して叩き割る音がした。
 そしたら、ローターは止まった。
 腕も、動く様子はない。
【レミ! でかした! 】
 ロボットの向こうには、駐車場。
 そこに、分厚いゴムの雨合羽を着た人が、弓に新たな矢をつがえている。
 レミュール・ソルヴィム。
 彼女の矢が、ロボットにとどめを刺したのだ。
 合羽の背中から、あの木製の羽が伸びている。
 彼女の羽は、根元から外せる。
 そして服の上から異能力を通じて操ることができるのだ。
 どす黒いフードの下でも、汚れた雨の中でも、レミの顔は人目を引く。
 もちろん、その美しさで。とドディは信じている。
 その木と肌のコントラストは、それぞれが生まれたことを誇っているように見ていた。
【もうすぐ、応援が来ます! 】
 彼女の弓が、今度は天に向けられる。
 矢じりには、紫がかった白い煌めき。
 矢を放つ。
 矢は10メートルほど上昇して止まり、辺り一面を紫電で満たす。
 鋭い光と轟音が空気を押しのけ、熱した。
 その異能の中に、バリアが溶けていく。
 あのバリアは、電気的に生み出される物なのだろうか。
 まるで、お湯に落とした砂糖だ。
 雷はバリアを溶かし続け、ロボットの胸にたどり着いた。
 バリア発生装置が火を吹いた。

 ドディは、川辺のロボットの左脇の下へもぐりこんだ。
 そこに大きなハッチがある。
 それを見つけてしたことは、中身を壊さないように、優しくたたくことだ。
 2発ほどでハッチがひしゃげた。
【バリアを張ろうとしても無駄だぞ!
 2年前の福岡では、アメリカ軍の電磁波兵器で一時的に無効化された。
 レミのは、もっと強いぞ】