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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「歴女先生教えて~」 第十話

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「詳しいのね、さすが高木くんね。多分彼は天皇になって政をする自信が無かったのと、そういう世界を好きじゃなかったと思うわ。子供の頃から腹違いの弟の大津と仲良く遊んでいて、自分よりすべてに優れている大津のことをきっと母のうののさららや父の天武に後継者にふさわしいと話していたと思う。でも母親の猛反対にあって、考え付いたのが病の演技だったのね。草壁は母親のうののさららとは異母妹である阿陪皇女(あへのひめみこ=阿閇とも書かれる)を妻にしている。阿陪皇女は壬申の乱で敵方だった大友皇子の異母妹に当たる。つまり天智天皇の子供というわけ。彼女には三人の子供があって、長女と長男はそれぞれ元正天皇(げんしょう)と文武天皇(もんむてんのう)となった」

「自分の妻が母親の妹だなんて、今だと考えられませんね。この当時は当たり前だったのでしょうか?」

「天皇家や大きな豪族では近親間の結婚が行われていたわ。それは血筋にこだわっていたからだと思うの。うののさららは夫の天武が死んで子供の草壁も亡くなったので、自らが女帝として即位した。有名な持統(じとう)天皇だよ。彼女は一切の情にほだされることなく、吉備真備(きびのまきび=学者で遣唐留学生となり帰国して従二位右大臣まで昇進して活躍した)らの協力を得て、遅れていた律令国家の完成を目指したの。自分の後継にはまず異母妹で亡き息子草壁皇子の妻である阿陪皇女(元明天皇)を、続けて阿陪の娘で孫の氷高(ひだか)皇女(=元正天皇)を、その後には成長した阿陪の息子で孫の珂瑠(かる)皇子(=文武天皇)と続けた。
残った亡き草壁のもう一人の娘(氷高の妹)、吉備内親王(きびのないしんのう)はその当時才能豊かな誰もが認める長屋王(ながやのおおきみ)の正妻となっているの」

「長屋王と言えば悲劇の主人公ですよね」

「そうね、長屋王の父親は天武天皇の息子である高市皇子(たけちのみこ)母親は天智天皇の皇女だから、皇位継承の順位は高かったの。当時聖武天皇(文武天皇の息子=持統天皇のひ孫)の皇后に藤原氏から光明子(こうみょうし)という女性が就いていたから、次期天皇は何としても外戚である藤原氏から選びたかったの。男子が無かった聖武天皇の後継に長屋王の子供が就かないように、無実の罪を着せて長屋王は追い詰められ自害した。そして妻である持統天皇の孫の吉備内親王も共に自害してしまうの。後年、天候異変が都を襲った時に、無実の罪で殺した長屋王の祟りだと騒がれた。持統天皇は自らの過ちを認めて長屋王を手厚く葬ったけど、その陰に藤原鎌足の息子藤原不比等(ふじわらふひと)の暗躍があったことは見逃せないわ」

「疑心暗鬼で宮中は揺れていたのですね。いつの時代も権力者は自分の都合で政治を操り、先手必勝とばかりに無実の人も殺してしまうのですね」

「そうよ、しかしね、こうした権勢を欲しいままにした藤原不比等も亡くなると、その四人の息子たちは当時の流行り病である天然痘に侵されて次々と死ぬの。市中の人たちは亡き長屋王の祟りだと騒いだらしい。創り話かも知れないけど、長屋王謀反ありの密告をした何某が、長屋王に可愛がられていた大伴子虫に斬り付けられて殺されてしまうの。殺人犯である子虫が罰せられなかったことも朝廷が長屋王に対して悔いているという証拠だとされているわ」

「因果応報ですね。現代社会でも同じようなことが起こりうることをボクたちは考えないといけないですね」

「高木くん、そうよ。その考え方は素晴らしいわ」

「えへへ、先生に褒められるなんて、嬉しいです。好きになりそうです」

「好きになりそうは・・・余分ね」

みんなが大笑いした。