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BOOK~白紙の魔道書~ 第一話「新年度1」

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「ふん…やる気のようね……いいわ生徒指導を執行します………行くわよハルト」

ハルトはこくりと頷き、立ち位置をカノンの後ろから隣に移動、後ろから生徒が来る気配はないため、目の前の集団を潰せばそれだけで終わると考えたからだ。

その考えは“恐ろしい程”に正解だった、後ろからの敵の増援はなく、二人は瞬く間に襲いかかってきた集団を全滅させ、バスケ部の部長を追い詰めたのだった。

「さて……バスケ部部長、貴方を生徒会に楯突いたとして処罰を下します、よろしいですね?」

「くそっ!!こうなったら俺がてめえらのその生意気な口きけなくしてやらぁぁぁ!!」

バスケ部の部長は叫び、まずカノンに襲いかかるが、その刹那ハルトが部長の顔に拳を叩き込んだ。

それを受けた部長は慣性の法則を無視したような軌道で飛びかかったのとは逆方向に吹き飛び、そのままの勢いで壁に激突し最初は痙攣していたもののやがてピクリとも動かなくなった。

「ぶ、部長!!?」

その場にいた部活員達は驚愕を隠しきれずに思わず声をあげる、それと同時にハルトに対して恐怖を覚え直後誰も声を上げなくなった。

そんな事をカノンは気にも止めずにその場にいた誰もが恐るように冷たい表情で部長に近づき処遇を言い渡した。

「バスケ部部長、明日の放課後生徒会指導室へ出頭と新入部員の勧誘活動の縮小を命じます」

そう意識のない部長に言い渡し、カノンとハルトはその場を後にした、その後体育館には静寂が残り誰も彼もがしばし恐怖に震えていたという。

体育館を後に後にした二人は急ぎ足で次なる標的剣道部に向かって歩きだした。

学園の中でも屈指の強者が集まる部活、それが剣道部、剣道部はバスケ部のように一筋縄ではいかないと二人は考えていた。

そこで二人はある作戦を考えた、ようは、頭さえ潰せばあとは烏合の衆なのだ、そう決まった時点で二人の作戦が固まる。

それは、部長との一騎打ちを持ちかけ、それの成績により処遇を考えるというものだ。

けれどこの提案、ひとつ問題があった、それは……。

「剣道部部長、ランス=権現坂の存在か……」

そう、問題なのは剣道部部長ランス=権現坂という男の存在だった、彼はインターハイでの優勝をはじめ、他校との練習試合や舞踏会の場での勝利など、学園の名の中でもトップクラスの実力者である。

一騎打ちになったら戦うのはもちろんハルトだ、そうなれば、さてどう勝つものかとハルトは考えている。

「何、弱気になってるの?あんたはこの私、カノン=レイノワールを倒したのよ?インハイで優勝してようが舞踏会の場で勝利してようが、ランカーでさえない相手に負けるわけないでしょ?」

確かにその通りだった、ランスはランカーではなく一般の生徒、そこまでの実力者の彼がなぜランカーになれないのか、それは一重にランスが脳筋だからである、ランカーとは武力・知力等様々な要因で優れたものが登録される、彼はそこには入らない生徒だったのだ。

(付け入るとすればそこか?)

ハルトの思考が回転を開始する、それからわずかに数秒でしゃがんでいたハルトは立ち上がり、カノンと共に剣道部の道場へと向かった。

剣道部の道場は学園の東側の山の中に位置し、徒歩で行くには少々遠い、そのため二人はバイクに乗り道場へ向かった。

この学園では、免許の取得などのサポート体制も整っているため、バイクに乗る学生がいても不思議ではない、それに生徒会役員は免許の取得も義務に含まれているらしい。

「さて、やっぱ結構遠いなここは、バイクで三十分って結構な距離だぞ」

そんな愚痴を吐くハルト、なにせ学園の駐輪場からここまで片道三十分ほど、しかも後半はほぼ山道なのだ。

「さて、行きましょう」

愚痴を吐く、ハルトとは対照的にカノンは涼しい顔でさっさと道場の扉をあけた。

扉をあけてまずカノンは驚いた、なぜならそこにはたった一人の部員のみがいたからだ。

「貴方はランス=権現坂」

それは剣道部部長ランス=権現坂だった、彼は道場の真ん中で正座し、まるで二人が来るのをまっていたかのようだった。

口を開いたのはランスからだった、そしてその内容は二人にとって予想外のものだったのだ。

「遅かったな生徒会、まず我が剣道部の部員の無礼を詫びよう」

なんとランスは二人に頭を下げたのだ、話を聞けばどうやら今回の件ランスは関わっておらず、一部の部員の暴走だということだ。

けれどそれだけでは収まらないことをランスは知っていた、この学園に長くいる者であれば、生徒会の恐ろしさを知らぬ者はほとんどいない、それを知っているランスは二人が来るのを一人で待ち他の部員たちへの被害を抑えることにしたらしい。

それを聞いた、二人は顔を見合わせ考えた、このままならば戦わずに事を収められるだろう、けれどここまでちゃんと筋を通しているのだ、例えランスの統率力のなさが原因だったとは言え、それはあまりに哀れだった。

「ならば、貴方に提案があります」

少し考えカノンは口を開いた、それはハルトとランスの一騎打ちを持ちかけるものだった、条件は「ランスが勝てば今回の件は水に流す」「負ければそれ相応の処罰を与える」というものだった。

ランスはとても驚いた顔で二人に「それでいいのか」と訪ねた、それもそうだろう襲撃してきた剣道部の部員は明らかに二人を殺そうとしていたのだ。

なのに、カノンはその事実を無視するかのような提案をしたのだ。

ランスは考え、そしてやがてその提案を飲んだ、けれどこれもカノンの策だった、こうすれば“無抵抗の剣道部部長”を罰するのではなくて、ちゃんと勝負に勝ち負けた部活に制裁を加えるという口実が出来上がったのだ、あとはハルトが勝てばの話だが、カノンは内心勝利を確信していた、普段カノンはハルトのことを認めていない素振りだがその実、誰よりも彼を認めているのはカノンだった。

つまり、カノンはハルトを信頼し、この提案を打ち出したのだった。

「じゃあ、後は任せたわ…ハルト君」

「あいよ」

返事を返しハルトは道場の真ん中に立った、ランスはその反対側に立ち、ハルトを睨みつけた。

(なにを考えているのだあの娘は?まあいい勝てば無罪放免ならば、相手の坊主には悪いが勝たせてもらう)

(なんて事考えてるんだろうなあの人、ま…負ける気なんかないんだけどね♪)

「では、はじめぇ!!」

開始の合図を出したのはカノンだった、その合図と共に二人ははじかれるように前にでた、ランスはハルトの動きに合わせ、竹刀を振り下ろした、それは確実にハルトを捉えた、はずだった。

竹刀がハルトの体に直撃したその瞬間、竹刀はハルトの体をすり抜け空を切った。

「なぁ!!」

何が起こったのかランスには理解ができていなかった、その瞬間キャパオーバーとなったランスの思考は一瞬停止、その刹那“一歩踏み込んでいた”ハルトの掌底がランスの鳩尾を捉えた。

「しっ!!」

ひと呼吸吐き、ハルトは当たった右腕に全力を込め、ハルトはランスの体を弾き飛ばした。

ハルトの特技は力の受け流し、自分の力として利用すること、ランスと弾き飛ばしたり、バスケ部部長を飛ばしたのはその応用。