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てっしゅう
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「歴女先生教えて~」 第九話

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「先生、女将さんボクたちのことどう感じたんだろう?」

「ええ?商売よ。そんなこと何も思ってないわよ。こういうお店はいろんな人が来るから、変に気を遣うと迷惑になるって知っていると思うわ」

「ならいいけど、親子じゃないし、姉弟でもないし、なんか見られると恥ずかしいって思たんです。気にしないでいいんですよね?」

「そうよ、恥ずかしいことなんかしてないでしょ?人に聞かれたらお付き合いしているのって答えるわ。学校関係以外の人によ、もちろん」

「はい、ボクもそう答えます」

加藤の美味しく食べている顔を見て美穂は幸せを感じていた。男の人は案外シャイで気を遣うんだと笑えた。
歳上だから遠慮なく話しているけど、もう少し彼を立てないといけないかも知れないと思い始めた。

美穂は食べ終わって加藤に1万円札を手渡した。

「ねえ、これでここの支払いをあなたがして。残りは持っておいて次のところで使ってくれればいいから」

「どうしてそんなことするんですか?」

「あなたは私の彼よ。お金は結婚してないなら男の人が払うものなの」

「先生・・・」

「ねえ、学校では先生でいいけど、外では美穂って呼んで。私も加藤くんのこと加藤じゃなく下の名前で呼ぶから」

「美穂さん、でいいんですね?」

「ううん、美穂でいいの」

「呼び捨てですか?」

「私も呼び捨てにする。加藤くん名前は拓真よね?」

「そうです。たくまです」

「じゃあ、拓真そろそろ行きましょうか」

レジで1万円を出して加藤は清算をした。相変わらず女将はニコニコしていた。

「ありがとうございました。またお越しくださいませ」

その声に頭を下げて加藤と美穂は店を出た。

「じゃあ帰りましょう。お父様にお土産を買ってゆきたいから、半島の向こう側の魚市場に寄っていいかしら?」

「そんな気を遣ってくれなくてもいいですよ」

「そうは行かないの。大人の付き合いというのは礼儀作法が要るのよ」

「先生・・・いや、美穂は本当に優しいって思うよ」

「普通よ。大切なあなたを預かっているんだから、当然の作法よ。お父様にも美味しいお魚を食べて戴きたいわ」

「うん、ありがとう」

車は15分ほど半島道路を走って魚市場に着いた。たくさんの海産物から干物と甘エビを選んで買った。日が少し傾き始めて美穂は加藤の家に戻ってきた。
土産を手にして加藤は車を降りようとした。

「拓真、こっち向いて」

「えっ?」

その瞬間軽く美穂はキスをした。驚いた顔の拓真に笑みを浮かべながら、

「さようならの時はこうするの・・・ね、次は拓真からしてよ」

「うん、わかった。今日はありがとう。月曜に学校で」

「そうね、お父様によろしくね。じゃや、バイバイ~」

美穂の車が見えなくなるまで手を振って見送っていた拓真に父親が声をかけた。

「拓真、先生と仲いいなあ~うまくやれよ、嫌われるな。あの人は本当に素敵な女性だからな」

「ああ、そう、これお土産。先生から父さんにって」

「お礼を言い忘れたじゃないか!早く言えよ」

「いいって、そんな気遣いは。オレは絶対に先生を離さないから。もっと自分を磨いて先生にふさわしい男にならないと、って考えている。なあ、明日から車のこと教えてくれよ。真剣に手伝いたいから」

「拓真、いい心掛けだ。やる気が出たな、いいとも教えてやるよ」

久しぶりに夕飯の時に父親は機嫌がよくいつもより酒が進んでいた。拓真はこれからのことを漠然とながら思い描いていた。