「歴女先生教えて~」 第八話
美穂は初めて座るミニの運転席のシートを調整して、エンジンをかけた。
日本車には無い独特のデザインと内装のセンスに少し心浮かれていた。車の運転はどちらかというと得意だと自分では感じていた。富山に居た頃は父の車をよく借りて乗り回していたからだ。それに比べるとコンパクトで視認性もいいから運転しやすいと思えた。
「先生、お待たせ」
「乗って」
シートベルトを締めている美穂の胸はそこにある大きさを見せつけていた。そして少しめくれ上がっていたミニのワンピースの裾から出ている脚は加藤の男を少し刺激した。
「じゃあ、いくわよ」
見送る父親に頭を下げて美穂は車のスピードを上げて車道に出た。
「とってもいい感じよ、この車。好きになりそう」
「それはよかったです。少し乗り心地が堅いけど、安心感がありますね」
「そうね、高速を走ると余計にそう感じるわね。ねえ、お父様何か言ってらした?あなたを誘ったこと」
「特に何も言ってないよ。迷惑にならないようにしろとは言われたけど」
「そう、なら良かった。どこに行こうかしら?市高速に入って海でも見に行く?」
「いいですね!そうしましょう」
「おいしいお魚が食べられるかもね。じゃあ高速は飛ばすわよ」
「安全運転でお願いします」
「あら、意外に真面目なのね」
「意外じゃないですよ、ボクは真面目ですから。先生の前だと変なことは言えないし」
「変なことって何?まさかエッチな事?」
「苛めないで下さいよ~」
「苛めてなんかいないわよ。話してもいいのよ。私は何も知らないからそういうことも勉強したいの。あなたなら安心して何でも聞けるし、私も話せると思うの」
「先生はどうして男の人と付き合ってこなかったのですか?」
「そうね、縁がなかったのかしら。女友達の方が話しやすかったから。今は加藤くんとこうして二人で話し合えるけど、前はそうではなかったの。男性恐怖症というか、興味がないというか、恋愛そのものにね」
「嫌な思いをされたのですか?」
「そう言う事でもないのよ。言っちゃうけど父親が好きだったの・・・ファザコンっていうやつかしらね。車借りて出掛けたりしていたわ。いつも父と一緒だった」
「へえ~そんなふうには見えませんけどね」
「どんなふうに見えるの?」
「どんなふうって・・・素敵な彼が居て情熱的な恋愛をしている感じに見えました」
「よく言われるわ。彼が居ないって答えると、うそ~って。自分にはよくわからないけど、今日はね加藤くんとこうなると思っていたから、こんな服装にしたの。あなたが好きだと思ってくれると嬉しいけど」
「今日の先生はとっても素敵です。変な意味じゃなく色っぽいし、女らしいです」
「ありがとう。良かった思い切って・・・」
車は高速を降りて少し走ると海が遠くに見えるようになってきた。
一番有名な海岸へ着くと、車を停めて外に出た。
シーズン前の海は静かで土曜日だというのに人影はまばらだった。
作品名:「歴女先生教えて~」 第八話 作家名:てっしゅう