They are fighting in my mind
生徒「それに比べてあいつは。」
全員「あいつは。」
ユウ「あいつって?」
生徒「少年A。」
生徒「花岡きっての不良少年。」
生徒「花岡の恥さらしも良いとこだ。」
女A「Aくん、堂々とした登場ありがとう。わたしの演説に飽きた人たちの目を覚ますのにいい材料になったわ。まあ、飽きる人なんていないけど。」
全員「(少女Aの言葉に笑う)」
女A「あなたもわたしの演説に耳を傾けるといいわ。そのすっからかんな頭に何か残るでしょうから。」
全員「(笑う)」
男A「......あほらし。」
少年A体育館を去る
少年Aの背中に向かって生徒はひそひそ話す
生徒「見ろあの髪の色。」
生徒「見たかあの制服の着こなし。」
生徒「見たよなあの顔の傷。」
生徒「あいつがあんなんだから俺らまで悪く見られる。」
ユウ「でも、人は見た目じゃないって言うじゃない。」
生徒「人は見た目じゃない?」
全員「見た目じゃない?」
ユウ「うん。」
生徒「結局は見た目だ。」
全員「見た目だ。」
生徒「あんな格好、」
生徒「あんな態度、」
生徒「それに比べて、」
生徒「あの容姿、」
生徒「あの態度、」
全員「結局は見た目だ。」
チャイムが鳴り、生徒はいなくなる
校舎裏、少年A現れる
少年Aにサス
男A「おいこら、お前ちゃんと食わないと死んじまうぞ?」
ネコ「にゃあん。」
男A「お前ただでさえちっこいんだから、いじめられるぞ。」
ネコ「にゃあん。」
男A「お前はひとりぼっちじゃないからな。」
ネコ「にゃあん。」
ユウその様子を影で見ている
ユウ「人は見かけによらない......やっぱりそうじゃん。」
校長室、少女Aが現れる
校長「いやあ、まさか有名な政治家さんにお会いできるとは。」
政A「娘がお世話になっているんですから、御挨拶しくらいは。」
校長「わざわざありがとうございます。」
政A「娘はどんな調子ですか。」
校長「いやあ、とても優秀ですよ。我が校のアピールにもなっています。」
政A「当たり前です。わたしの娘なんですから。」
校長「娘さんに、我が校に入学して戴けて本当に助かりましたよ。」
政A「......A。」
女A「......はい、父さん。」
政A「校長先生から聞いたぞ、目覚ましい活躍に父さんは鼻が高い。」
女A「......はい。」
政A「これからも励みなさい。......いいか、くれぐれも問題を起こしてくれるなよ。」
女A「......はい。」
政A「では、校長先生、わたしはこれで。」
校長「ありがとうございました、お見送りを、」
政A「見送りは結構です、娘に出口までは案内させますから。」
校長「そうですか、ではまた......」
少女A悔しそうな顔をして身を翻し退場
少年Aのサスの位置に、少女Aと生徒が群がる
女A「あら、いい御身分ね。こんな所で暢気にお昼寝?気楽でいいわね不良クンは。」
男A「......。」
女A「何なのよ、無視?返事くらいしなさいよ。」
男A「......。」
女A「むかつくのよ、あんたみたいなクズ人間見てると。(殴る)」
男A「......。(抵抗しない)」
女A「何なのよ、何なのよ!(暴力をふるう)」
男A「(抵抗しない)......あんたもかわいそうだな。」
女A「はあ!?何を......ッ!......あら?何この薄汚い猫(乱暴に持ちあげる)」
男A「やめろ!そいつは!」
女A「なあに?この猫と遊んで立って訳?あはははは、うけるんですけど。(生徒と共に猫をいじめる)」
男A「やめろっつってんだろ!」
女A「......あれ?動かなくなっちゃった。もしかして、しん......。」
男A「ざっけんなこのくそアマが!(殴りかかる)」
女A「キャアー!」
生徒と少年Aは殴り合いになる
騒ぎを聞きつけた教師が来る
教師「おい、何をやってるんだ!やめんか!」
男A「ゆるさねェ、絶対許さねェ!」
ゆっくりとサスFO
ユウにだけサス当たる
謹慎処分の張り紙を呆然と立ち尽くして見る
周りに生徒が立ちざわざわと話す
ユウ「......少年A、以上の者を謹慎処分とする。」
生徒ストップモーション
ユウ「......人は見かけによらない。」
少女Aにサス
父親と向かい合って話している
政A「何をやっとるんだお前は!」
女A「......。」
政A「あれだけ騒ぎを起こすなと言ったよな俺は。なのにお前は......。」
女A「......。」
政A「今回は被害者側だったからまだよかったものを。......今後はこんなさわぎおこしてくれるなよ、いいな?」
女A「......(睨みつける)。」
政A「なんだその目は!(殴りつける)」
ゆっくりとサスが消える
少年A、少女Aが真中に立つ、サスCI
TV「ただいま入ったニュースです。今日未明、東京都世田谷区で強盗殺人が起こりました。現行犯で逮捕されたのは少女A容疑者(25)。警察によりますと、被害者男性はA容疑者の父親であることが判明しました。この二人の間に何らかの問題があったとみて警察は調べを進めています。」
TV『ニュースです。今日未明に起こった強盗殺人事件の犯人を現行犯逮捕した、○○交番の少年A巡査に、警視庁から感謝状が贈呈されました。』
●現代 ユウの家
父 「そうそう、そこの交番の感謝状貰ったお巡りさん、あの子なんだな。」
母 「あの子?」
父 「そうそう、ほら、ユウの学校の......」
母 「何を言ってるんですかお父さん。ユウはフリーターですよ。」
ユウ「お母さん、せめて社会人と言って。」
母 「何が社会人よ、弟を見習いなさい。もうあの子内定4つも決まってるのよ。」
ユウ「なーんも聞こえなーい。」
母 「都合のいい耳だ事。」
父 「ほら......えっと、」
母 「まだ言ってたんですか?」
父 「ああ!思い出した!花岡の不良くん!」
母 「不良くん?」
父 「不良くん。」
母 「......ああ、不良くん。」
父 「まさか、彼がこんな立派なお巡りさんになるなんてな。」
母 「そうねぇ。」
父 「不良くんもだけど、生徒会長の子も衝撃だったねぇ。」
母 「そうねぇ。」
父 「あんなに出来た子だったのになぁ。」
母 「本当にねぇ。」
父 「人は見かけによらないな。」
ユウ「ねえ、」
二人「ん?」
ユウ「成績優秀な真面目ちゃんと、怪我だらけの不良が喧嘩してるとするでしょ。」
二人「うん。」
ユウ「どちらかが絶対悪いんだけど、お互い主張しあって、言ってること互角だったら、父さんたちならどっちを信じる?」
父 「難しいけど......真面目な子かなぁ。」
ユウ「なんで?」
父 「真面目な方を信じたくなるって言うのが人間の心理だろ。」
ユウ「じゃあ、血だらけのナイフを持った人と、血だらけの制服着たお巡りさんが掴み合いしてたら、見た瞬間どっちが犯人だって信じる?」
父 「お巡りさんじゃないかなぁ。」
ユウ「なんで。」
父 「お巡りさんは正義のヒーローだからかなぁ。」
ユウ「正義。」
作品名:They are fighting in my mind 作家名:馬場ふたば