アイスクリームプログラム
アイスクリームプログラム
テーマ:氷
机上の麦茶に入った氷が溶けてもうなくなって、それを忘れてそのまま外に出て行った感じ。
(俺視点ver.)
作ったばかりの麦茶は少しぬるかった。天気予報のお姉さんが「今日は猛暑日です」って言ってたのを思い出して、ぬるい麦茶に氷を入れた。氷の入った麦茶は冷たくて、馬鹿みたいな暑さをあっという間に取り払ってしまった。外でミンミンゼミがけたましく、サイレンの様に唸ってる。ただ、窓を開け払って、扇風機の風を強にして吹かれる午前11時はくそみたいにつまらなくて、学生時代の馬鹿みたいに騒いだ夏が遠い記憶に感じる。あの頃からまだほんの少ししかたってないのに、大人ぶるだけ大人ぶって、子どものままなのに、偉そうに自論を語っちゃったりしてる。ほんの少し前まで大嫌いだった大人の真似ばかりしてる。
ふと思い出して、携帯と薄っぺらい財布を持って家を出る。ドアを開けただけなのにむわっと蒸し暑い空気が体の周りにねっとりと絡みつく。部屋から出た瞬間、残暑の太陽がギラギラと容赦なく照りつけてくる。「お前はまだまだ甘いんだ」なんて説教してるかのように、ウザったるい暑さを背にただ土手道を歩く。
麦茶に入れた氷はすっかり溶けて、グラスから滴る滴は机の上に小さな水たまりを作っているのか。また、麦茶はぬるくなったのかな。喉の渇きを覚えてふと思い出した麦茶の味は酷く苦くて、頭がキンとするくらい冷たかった。
そろそろ家に帰ろうかな。商店街のざわめきと、夕日のスポットライトを浴びて、一人独壇場へと帰路につく。
(麦茶視点ver.)
外界との温度差に、わたしを支える容器も滴を垂らす。気づけばまわりに溺れそうな水たまりが出来上がっていた。扇風機が部屋中に窓から入る生ぬるい夏の香りを送り込む。グラスを撫でる生温かい風に、水滴が静かに落ちては新しい水たまりをつくる。行き場のないこもった熱を冷ますため、あなたが入れてくれた氷はいつの間にか溶けきってしまった。冷たかった体はまた熱を孕む。この火照った熱をあなたに飲み干して欲しかったのに、あなたはわたしを忘れて何処かへ行ってしまった。苦さを含んだ味も溶けてしまった水分ですっかり薄まってしまった。あなたが呟いた、過ごした遠い夏の日の思い出も同じように薄まってしまったのか。ほんの二時間前に出会ったわたしには想像することしかできないけれど。
ガラス越しに見るあなたの憂鬱な顔。ふいにどこかへ行った表情は水滴が邪魔でよく見えなかったけれど。帰って来たあなたの顔、水滴越しに見えた顔、ふっきれた表情。あなたが手を濡らしてグラスをとる。静かにわたしはあなたの一部になった。
登場人物
俺(25)
10月10日、天秤座。B型。男。父母弟の四人家族。彼女なし。
希望を持って田舎から出てきたが、社会の厳しい風に当たり、追いかけてた夢に諦めを持ち始めている。夢を追いかける中、厳しさの狭間で揺れ動く気持ちの葛藤なう。
アルバイト先は小さな居酒屋。居酒屋の手立てを元に夢へ投資している。最近はもう一つバイト増やそうかなとか考えてる。
麦茶(二時間)
8月下旬の昼に誕生。女。
●イントロ
机上に氷の解けたグラスが置いてある。
時間は夕刻、西日がカーテンの隙間から入り込む
麦茶「何してんのかな、もう空がオレンジ色になっちゃってるのに。」
グラスに入った麦茶と夕日が重なる。
静かに水滴がグラスを伝う
麦茶「......もう、すっかりぬるくなっちゃったな。」
ドアの鍵が回る音がする。
男が静かに部屋に入って来る。
男 「ただいま。」
麦茶「おかえり。」
男 「あー、最悪。部屋開けっぱなしだった。あっつ......」
麦茶「どこ行ってたの?」
男 「あれ、麦茶出しっぱなしだったっけ。」
麦茶「忘れるなんて酷いな。」
男 「まあ、いっか。」
グラスを手に取り、麦茶を飲み干す。
男 「ぬっる......。」
●八月下旬午前11時
蝉の声と、大型トラックのエンジン音が響く都会の部屋の一角。
男がテレビを見ながらたそがれている。
TV「今日は、今年の中でも記録的な猛暑となりそうです。熱中症対策をしっかりとし......」
男 「まじかよ......」
TVの電源をブチっと切る
男 「しっかし暑いな......冷房、あ、壊れてるんやった。」
エアコンのリモコンをおもむろに手に取り、もう一度机の上に置く
男 「なんもやることないな......あ、あいつ、」
スマホを手に取り友人に連絡を取る
男 「バイト?......まじか。こいつは、彼女とデート、死ね。んだよ、どいつもこいつもつまらねえな。前は何するもどこ行くも一緒だったじゃねえかよ。」
溜息をつきスマホを投げる。
その場に寝転がる様にして目を閉じる。
●回想シーン
高校の校舎、体育館、男の中の記憶が連想される
情景だけでなく段々と放課後の部活動に励む部活動生の掛け声、ボールが床を叩く音、パタパタと廊下を走るせわしない足音、最後は夏の香りまでが生々しく思い浮かぶ
友?「はやく部活行こうぜ。」
友?「待てよ、これ書きあげらんならん。」
男 「お前、課題だしとらんかったんか。」
友?「出しとらんとちゃうわ。」
友?「嘘言え。まつもんに呼び出し食らっとったくせに。」
友?「お前こそ、シゲに呼び出されるぞ。」
友?「まーじーでー、それだけは勘弁。」
友?「あとどれくらいだよ。」
友?「こんだけ。(3分の一程度埋まっている)」
男 「......俺の写した方が早いんとちゃう?」
友?「お前のその一言を待ってた。」
男 「図々しい奴め。」
友人?必死にノートを移す
刻一刻と夏の夕刻は針を進める
友?「つか、お前俺のCD返せや。」
男 「......なんやっけ?」
友?「○○のセカンドアルバムやあほ。」
男 「思い出した。」
友?「貸しさんな。」
男 「は、何でなん。」
友?「一時間目の体育、シューズかしたやないか。あと、お前のおかんから忘れ物あずかって届けた。」
男 「......限定焼そばパンでええか?」
友?「コーヒー牛乳もな。」
男 「はあ!?」
友?「なんや、文句あんのか?」
男 「何もあらへんわ。」
友?「終わったー!」
友?「んなら部活行こうぜ。」
全員「おーよ。」
わちゃわちゃしながら部活へ向かう
水道だったり、体育館だったり、学校の映像とか流れそうかな。
●八月下旬12時過ぎ
目を覚ますと正午過ぎ。
はっとして起き上がる。汗だくである。
男 「えらい、懐かしい夢みたな。......あっつ、」
立ちあがり扇風機を付ける
男 「喉乾いた。......麦茶作ってたっけ。」
冷蔵庫を開け、中から麦茶のタッパーみたいなのを取り出す。
男 「ないじゃん。」
お湯を沸かし、新しく麦茶を作る。
グラスに麦茶を注いで口を付ける。
男 「......ぬる、」
テーマ:氷
机上の麦茶に入った氷が溶けてもうなくなって、それを忘れてそのまま外に出て行った感じ。
(俺視点ver.)
作ったばかりの麦茶は少しぬるかった。天気予報のお姉さんが「今日は猛暑日です」って言ってたのを思い出して、ぬるい麦茶に氷を入れた。氷の入った麦茶は冷たくて、馬鹿みたいな暑さをあっという間に取り払ってしまった。外でミンミンゼミがけたましく、サイレンの様に唸ってる。ただ、窓を開け払って、扇風機の風を強にして吹かれる午前11時はくそみたいにつまらなくて、学生時代の馬鹿みたいに騒いだ夏が遠い記憶に感じる。あの頃からまだほんの少ししかたってないのに、大人ぶるだけ大人ぶって、子どものままなのに、偉そうに自論を語っちゃったりしてる。ほんの少し前まで大嫌いだった大人の真似ばかりしてる。
ふと思い出して、携帯と薄っぺらい財布を持って家を出る。ドアを開けただけなのにむわっと蒸し暑い空気が体の周りにねっとりと絡みつく。部屋から出た瞬間、残暑の太陽がギラギラと容赦なく照りつけてくる。「お前はまだまだ甘いんだ」なんて説教してるかのように、ウザったるい暑さを背にただ土手道を歩く。
麦茶に入れた氷はすっかり溶けて、グラスから滴る滴は机の上に小さな水たまりを作っているのか。また、麦茶はぬるくなったのかな。喉の渇きを覚えてふと思い出した麦茶の味は酷く苦くて、頭がキンとするくらい冷たかった。
そろそろ家に帰ろうかな。商店街のざわめきと、夕日のスポットライトを浴びて、一人独壇場へと帰路につく。
(麦茶視点ver.)
外界との温度差に、わたしを支える容器も滴を垂らす。気づけばまわりに溺れそうな水たまりが出来上がっていた。扇風機が部屋中に窓から入る生ぬるい夏の香りを送り込む。グラスを撫でる生温かい風に、水滴が静かに落ちては新しい水たまりをつくる。行き場のないこもった熱を冷ますため、あなたが入れてくれた氷はいつの間にか溶けきってしまった。冷たかった体はまた熱を孕む。この火照った熱をあなたに飲み干して欲しかったのに、あなたはわたしを忘れて何処かへ行ってしまった。苦さを含んだ味も溶けてしまった水分ですっかり薄まってしまった。あなたが呟いた、過ごした遠い夏の日の思い出も同じように薄まってしまったのか。ほんの二時間前に出会ったわたしには想像することしかできないけれど。
ガラス越しに見るあなたの憂鬱な顔。ふいにどこかへ行った表情は水滴が邪魔でよく見えなかったけれど。帰って来たあなたの顔、水滴越しに見えた顔、ふっきれた表情。あなたが手を濡らしてグラスをとる。静かにわたしはあなたの一部になった。
登場人物
俺(25)
10月10日、天秤座。B型。男。父母弟の四人家族。彼女なし。
希望を持って田舎から出てきたが、社会の厳しい風に当たり、追いかけてた夢に諦めを持ち始めている。夢を追いかける中、厳しさの狭間で揺れ動く気持ちの葛藤なう。
アルバイト先は小さな居酒屋。居酒屋の手立てを元に夢へ投資している。最近はもう一つバイト増やそうかなとか考えてる。
麦茶(二時間)
8月下旬の昼に誕生。女。
●イントロ
机上に氷の解けたグラスが置いてある。
時間は夕刻、西日がカーテンの隙間から入り込む
麦茶「何してんのかな、もう空がオレンジ色になっちゃってるのに。」
グラスに入った麦茶と夕日が重なる。
静かに水滴がグラスを伝う
麦茶「......もう、すっかりぬるくなっちゃったな。」
ドアの鍵が回る音がする。
男が静かに部屋に入って来る。
男 「ただいま。」
麦茶「おかえり。」
男 「あー、最悪。部屋開けっぱなしだった。あっつ......」
麦茶「どこ行ってたの?」
男 「あれ、麦茶出しっぱなしだったっけ。」
麦茶「忘れるなんて酷いな。」
男 「まあ、いっか。」
グラスを手に取り、麦茶を飲み干す。
男 「ぬっる......。」
●八月下旬午前11時
蝉の声と、大型トラックのエンジン音が響く都会の部屋の一角。
男がテレビを見ながらたそがれている。
TV「今日は、今年の中でも記録的な猛暑となりそうです。熱中症対策をしっかりとし......」
男 「まじかよ......」
TVの電源をブチっと切る
男 「しっかし暑いな......冷房、あ、壊れてるんやった。」
エアコンのリモコンをおもむろに手に取り、もう一度机の上に置く
男 「なんもやることないな......あ、あいつ、」
スマホを手に取り友人に連絡を取る
男 「バイト?......まじか。こいつは、彼女とデート、死ね。んだよ、どいつもこいつもつまらねえな。前は何するもどこ行くも一緒だったじゃねえかよ。」
溜息をつきスマホを投げる。
その場に寝転がる様にして目を閉じる。
●回想シーン
高校の校舎、体育館、男の中の記憶が連想される
情景だけでなく段々と放課後の部活動に励む部活動生の掛け声、ボールが床を叩く音、パタパタと廊下を走るせわしない足音、最後は夏の香りまでが生々しく思い浮かぶ
友?「はやく部活行こうぜ。」
友?「待てよ、これ書きあげらんならん。」
男 「お前、課題だしとらんかったんか。」
友?「出しとらんとちゃうわ。」
友?「嘘言え。まつもんに呼び出し食らっとったくせに。」
友?「お前こそ、シゲに呼び出されるぞ。」
友?「まーじーでー、それだけは勘弁。」
友?「あとどれくらいだよ。」
友?「こんだけ。(3分の一程度埋まっている)」
男 「......俺の写した方が早いんとちゃう?」
友?「お前のその一言を待ってた。」
男 「図々しい奴め。」
友人?必死にノートを移す
刻一刻と夏の夕刻は針を進める
友?「つか、お前俺のCD返せや。」
男 「......なんやっけ?」
友?「○○のセカンドアルバムやあほ。」
男 「思い出した。」
友?「貸しさんな。」
男 「は、何でなん。」
友?「一時間目の体育、シューズかしたやないか。あと、お前のおかんから忘れ物あずかって届けた。」
男 「......限定焼そばパンでええか?」
友?「コーヒー牛乳もな。」
男 「はあ!?」
友?「なんや、文句あんのか?」
男 「何もあらへんわ。」
友?「終わったー!」
友?「んなら部活行こうぜ。」
全員「おーよ。」
わちゃわちゃしながら部活へ向かう
水道だったり、体育館だったり、学校の映像とか流れそうかな。
●八月下旬12時過ぎ
目を覚ますと正午過ぎ。
はっとして起き上がる。汗だくである。
男 「えらい、懐かしい夢みたな。......あっつ、」
立ちあがり扇風機を付ける
男 「喉乾いた。......麦茶作ってたっけ。」
冷蔵庫を開け、中から麦茶のタッパーみたいなのを取り出す。
男 「ないじゃん。」
お湯を沸かし、新しく麦茶を作る。
グラスに麦茶を注いで口を付ける。
男 「......ぬる、」
作品名:アイスクリームプログラム 作家名:馬場ふたば