家族会議
妹「ねぇ、お姉ちゃん、どんな人なの?」
姉「普通の会社勤めのサラリーマンよ。」
父「ということは......お前より年上か。相手は年はいくつだ。」
姉「......それは......(言えずに黙り込む)」
主「42歳」
全員「42歳!?」
姉「あ、安希!なんであんたがそれを知って......!?タマにしか言ってない筈なのに!?」
主人公は戸惑う姉を見てタマの方を向き親指を立てる
と同時に父がちゃぶ台返し
父「許さん許さん許さん......!今すぐその男を連れて来い!親子ほど年の離れた女を相手にするなど俺は許さんからな!」
姉「父さん!」
父「今すぐここへ呼べ......!今すぐだ!」
姉「無理よ!彼だって仕事だし、急には無理よ!」
父「愛する人の父親が呼んでも来ないなんぞ、どんな男だ!無理をしてでも連れて来い!」
姉「(溜息)......分かった、少し電話してくる。」
上手側へ姉退場
タマが主人公の服を引っ張り呼ぶ
タマ「いいか?次は妹じゃ。あいつはな......(安希の耳へ話し掛ける)」
主「......了解。でも、もっとデカいネタ仕入れられなかったの?」
タマ「いいから、はやくしろ!」
主「分かったよ......母さん、結希が母さんに言わなきゃいけない事があるらしいよ。」
母・妹「え?」
主「ほら、この前母さんに黙ってプリン、二個食べたろ。」
妹「お兄ちゃん何で知ってるの!?だって、それ、タマにしか言ってない!」
主「しかも、そのプリンのうち、一つは母さんのだったんだろ?」
母「......犯人は結希だったのね。」
妹「だ、だって!プリンが二つ残ってたから......どうしても食べたくなって......ごめんなさい。」
母「食べ物の恨みは、怖いわよ?結希?......結希はこれから一週間おやつ抜きにします。」
妹「お母さん酷い!鬼!」
母「母さんのプリン食べてこの程度で許して貰えるんだから、有難く思いなさい。」
上手から姉が登場
姉「父さん、......行伸(ゆきのぶ)さんが変わって欲しいって、父さんに。」
父「行伸......誰だ。」
姉「......彼氏。」
父「貸せ(素早く奪い取って怒鳴りながら上手へ)」
主「おい、......おい、タマ。なんかこれで良かったのか?家の中滅茶苦茶なんだけど。」
タマ「......にゃー」
主「おい、ふざけんなよ!どう責任取るつもりだよ。これ以上姉ちゃんと結希に目を付けられるなんて......!俺は御免だぞ!」
タマ「......まぁ、どうにかなるはずだ。」
主「どうにかって......!どうなるんだよ......!?」
父が上手から登場
電話の彼と楽しそうに話しながら現れ、家族はポカンとして見るがタマだけは当たり前だと言わんばかりに毛づくろいをしている。
父「ああ、なんだ......ああ、うちの娘を宜しくな。......なに、お前になら任せても平気だ。......ああ、また二人ででも飲みに行こう、近いうちにな。ああ、じゃあな。」
主「これどういう展開?(タマに耳打ち)」
タマ「だから大丈夫だと言ったろう?」
姉「ちょ、......父さん、どういうこと?」
父「ん?ああ、行伸は俺の大学時代の後輩何だ。」
全員(父・タマ以外)「......はぁ!?」
父「あいつなら大丈夫だ、美希!お前良い奴を選んだな。なかなか見る目があるぞ?さすが俺の娘だ!はっはっはっはっは!」
父「ああ、それから、この後すぐに家にくるそうだから、母さん、今夜は鍋にしよう。」
母「急に言われても......そんなすぐには買いに行けませんよ。」
父「そこを何とか......頼むよ。」
母「......仕方ないですね。......じゃあ、お使いは頼みますよ。」
父「ああ。」
状況について行けずポカンとする一同
タマが自慢げに笑う
タマ「なぁ?安希、どうにかなっただろ?」
主「......こんな展開......あり?」
姉「安希!」
主「はい!」
姉「......ありがとう。」
主「......はい?」
姉「あんたが父さんに言ってくれなかったらこんなに丸く収まって無かったかもしれないな、と思ってね。父さんに言った時は煮て食べてやろうかと思ったけど......あんたに感謝する羽目になるとはね。」
主「べっつにー?まあ、感謝してくれても良いんだけど?」
姉「あんまり調子に乗ると怒るわよ?」
主「はい、すみませんでした(頭を下げて謝る)」
姉「はい、よろしい。」
主「姉ちゃん」
姉「ん?」
主「幸せになれよな。」
姉「......当たり前でしょ?」
主「姉ちゃんみたいな人と付き合ってくれる人なんてそうそういないんだからさ、今の人逃したら、姉ちゃん一生結婚できないよ。俺、姉ちゃんみたいな人とは絶対結婚したくもないし、付き合いたくもないから。俺、彼氏さん尊敬するわ。」
姉「なっ......!あーあ!感謝して損した!あんたも、そんなんだから彼女がいつまでたっても出来ないのよ。大体、何なのよその変な髪型。ちゃんと切りなさいよ。」
主「なっ......!姉ちゃんみたいなおばさんには分からないんだよ!」
姉「おばさんとは失礼しちゃうわね!知ってんのよ?毎朝毎朝、鏡の前で『あ、俺かっこいい』とかかっこつけてんの。かっこよくもなんともないわよ。」
主「な、何でそれを知って......!?」
妹「お兄ちゃんの馬鹿!(ハリセンタックルしてくる)」
主「うわっ!」
妹「何でプリンのことバラしちゃうの!?ていうか、なんでお兄ちゃんそれ知ってるの!?そのことはタマにしか言ってない筈なのに......!」
姉「あ!確かに!なんであんた行伸さんの歳しってんのよ。」
主「さぁて、何ででしょう?」
姉・妹「まさか......!本当に......!?」
タマの鈴の音が鳴り、母とタマ以外の人のモーションが止まる
タマ「にゃーん。」
母「タマ、やっぱりあなたの仕業だったのね。」
タマ「ああ、そうだが?」
母「安希はあなたと話せるのね。」
タマ「ああ、美幸に似ているからな、安希は。」
母「あまり安希をいじめないで頂戴ね?」
タマ「いじめてなんかいないさ。......美幸、」
母「何?」
タマ「たまには家族同士で腹を割って話すのも、悪くは無いだろう?」
母「そうねえ......。」
タマ「話さないと分からない事はたくさんある。たとえそれが家族であってもだ。所詮は人と人なんだからな。いくら一緒に生活をしてようと腹のうちは分からない。」
母「だから、安希を中継役として家族会議を進めてくれたのね。」
タマ「わしは何もしちゃいないさ。あれは、安希がした事だ。」
母「これからも、安希をお願いね。」
タマ「にゃーん。」
タマの鳴き声で全員が動き出す
主「タマ!」
タマ「にゃーん。」
主「ありがとな、お前のおかげで、神田家はもっと仲よくなったよ。」
タマ「それは良かった。」
主「たまには腹を割って話すってのも......悪くないな。」
タマ「にゃーん。」
●緞帳が下りる