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馬場ふたば
馬場ふたば
novelistID. 61242
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マージナル・マン

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あきら「みずきママもたけだい出身だったんだね。」
みずき「みたいだな。」
り ほ「知らなかったの?」
みずき「母ちゃんの学生時代とか興味ないし。」
り ほ「あー、お父さん!」
あきら「どれ?」
り ほ「これ。陸上部のこの、変な色のTシャツの。」
まなみ「りほパパは変わらないみたいね。」
みずき「お前も自分の親がたけだい出身って知らなかったんじゃん。」
り ほ「知ってたよ。けど、何期生とかは知らなかったし。」
あきら「これ、何年前のアルバム?」
かなこ「えっと......三十年前。今年創立三十周年だから、」
みずき「一期生ってことか。」
り ほ「じゃあ、お父さんは。」
みずき「知らねえよ。」
あきら「これ、ワンチャンスあるんじゃない?」
全 員「ワンチャンス?」
あきら「卒業文集、おばさんのとか、みずきママのとか。まだあるかも。」
り ほ「お父さんのも、」
あきら「あるかもね。」
かなこ「卒業文集ってあるとしたら図書室?」
あきら「そうだね。」
り ほ「わたし、借りてくる。」
あきら「それならわたしも。」
みずき「俺も行くよ。」
かなこ「じゃあ、三人に頼むよ。」
三 人「はーい。」

   りほ、あきら、みずき退場
   ドア開閉音CI

まなみ「一歩大きく前進って感じだね。」
かなこ「そうだね。」
まなみ「でも、わたし達は自分でやらなきゃだよね。」
かなこ「そう、だね。」
まなみ「わたし、お母さんにわがまま言ったことないかも。」
かなこ「わたしも。」
まなみ「やっぱり?」
かなこ「うち、お母さん一人でわたしを育ててくれてるから。わがまま言って迷惑かけられないって思ってて。」
まなみ「そう言えば、さっきそんな事言ってたね。」
かなこ「うん。」
まなみ「わたしもだよ。お母さん一人で、わたしと、妹と弟、全部の世話してくれてるし、これ以上面倒かけられない気がするんだ。」
かなこ「でも、今はわがまま言っとけばよかったって、少し後悔してる。」
まなみ「そうなの?」
かなこ「うん。あの三人見てると、自分のやりたい事に真っ直ぐで、いいなって。」
まなみ「かなこ、何かしたい事あるの?」
かなこ「ここだけの話よ。」
まなみ「うん。」
かなこ「歌手になりたいんだ。」
まなみ「え!?」
かなこ「しっ、声大きいよ。」
まなみ「ごめん。」
かなこ「意外でしょ。」
まなみ「正直言うと。お母さんには言ったの?」
かなこ「冗談言わないでって言われた。」
まなみ「本気なんでしょ。」
かなこ「うん。」
まなみ「そう言えばいいじゃない。」
かなこ「......うん、」
まなみ「かなこはさ、我慢しすぎなんだよ。わがまま、言ってみたっていいんじゃない?」
かなこ「まなみもね。」
まなみ「え、わたし?」

   りほ、あきら、みずき登場
   ドア開閉音CI

三 人「ただいま。」
二 人「おかえり。」
かなこ「重かったでしょ。」
あきら「三宅先生が張り切ってたくさん貸してくれたよ。」
り ほ「なんと、過去三十年分だよ。」
かなこ「つまり、創立から去年の分までってことだね。」
り ほ「先生が言ってたんだけど、前にわたし達と同じで文集を借りに来た生徒がいたんだって。」
まなみ「わたし達と同じような事、しようとした高校生がいたって事か。」
みずき「何期生とかは教えてくれなかったけどな。」
り ほ「やっぱり居るんだね、そんな高校生。」
かなこ「その生徒は、結局どうなったんだろうね。」
みずき「あー、何て言ってたっけ。」
り ほ「忘れた。」
あきら「あった、おばさんの卒業文。」
全 員「どれどれ!?」
あきら「これ、将来の夢。だって。」
みずき「何て書いてあるんだ。」
あきら「わたしはまだ、将来の夢がありません。」
かなこ「なんか、意外。」
あきら「この三年間、他の友人は着実に進路実現に向けて歩んで行きました。」
り ほ「そんな中、わたしはただひたすら焦っていました。......先生にもこんな時期があったんだね。」
あきら「これから、大学へ駒を進めます。大学で自分が何をしたいのか、自分と向き合って行きたいと思います......」
みずき「何だよ、鳥丸先生だって、あきらに偉そうなこと言ないじゃんな。」
あきら「え、」
みずき「だって、先生もどうするか決めずに大学進学したんだろ。」
り ほ「確かにね。」
かなこ「ねえ、あきら、先生には何て反対されたの?」
あきら「『確りとした目標がない限り、県外への進学は勧められない』って。」
みずき「自分のことは棚に上げておいて?」
まなみ「先生、大学時代、なんかあったのかもね。」
みずき「にしたって納得いかねえ。」
あきら「わたしも納得いかない。」
みずき「よし、あきら、この弱みを使って先生に対決をしかけるんだ。」
あきら「......え、今?」
みずき「今。」
あきら「無理。」
まなみ「まあまあ。あきらのペースでいいでしょ、みずき。」
かなこ「それより、みずきは自分の敵の弱み、探さなくて良いの。」
みずき「探します。」
り ほ「お父さんの文集あった!」
かなこ「よく見つけられたね。」
り ほ「適当に探したらあったよ。女の勘ってやつ。」
まなみ「はいはい。」
あきら「何て書いてあった?」
り ほ「高校生活一番の思い出。」
まなみ「それでそれで。」
り ほ「高校生活一番の思い出と言えば、友人と出かけた一泊二日の小旅行だ。」
みずき「小旅行、ってことは、おじさんも旅行行ったことあるんだな、子どもだけで。」
り ほ「みたいだね。あ、お父さん失敗ばかりの旅行だって書いてる。」
まなみ「何々、ルートを調べずに行ったため出先で迷った。」
あきら「宿泊の予約を取って無くて、急きょ野宿。」
かなこ「大人に迷惑たくさん掛けたって書いてるね。」
り ほ「お父さん、馬鹿だな。」
かなこ「だからこそ、子どもだけの旅行を反対するのかもね。」
り ほ「お父さんみたいなへまはしないし。」
みずき「どうだか。親子は似るもんだぞ。」
り ほ「そういうみずきもみずきママそっくりだから。」
みずき「冗談よせよ。」
り ほ「冗談じゃないし。」
かなこ「みずき、お母さんの文集あった?」
みずき「おう。多分これ。」
かなこ「多分?」
みずき「旧姓だから。あってるとは思うけど。」
まなみ「将来のわたし、向井みほこ。」
り ほ「四十年後のわたしへ。......なんで四十年後?」
みずき「細かい事はいいだろ。俺が恥ずかしい。」
り ほ「なら自分で読めばいいじゃん。」
みずき「それはそれで恥ずかしいんだ。」
まなみ「二十代のうちに結婚して、幸せな家庭を築き、専業主婦になり、」
みずき「うち、共働きだけどな。」
り ほ「優秀な息子を持つ、世界一幸せな主婦。優秀?」
みずき「やめろ、俺を見るな。」
まなみ「受験という大きな壁を越えたわたしは、あ、こっからは普通の文章だ。」
みずき「それまでは普通じゃないってことかよ。」
かなこ「随分、みずきママはメルヘンチックだったんだね。」
みずき「妄想激しかったって言ってくれた方が楽だった。」
り ほ「いいじゃん、かわいいじゃん。」
みずき「んだよ、母ちゃん。俺には現実見ろ的な事言ってたのに。」
あきら「優秀な息子、」
作品名:マージナル・マン 作家名:馬場ふたば