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馬場ふたば
馬場ふたば
novelistID. 61242
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マージナル・マン

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り ほ「あきらは県外に進学しちゃうし、みずきは就職しちゃうし。」
かなこ「そう考えると寂しくなっちゃうね。」
り ほ「高校2年の夏は今しかないんだよ!えんじょいしないでどうするの!もう2度と戻ってこないんだよ!楽しむべきでしょ!」
みずき「......何か俺さ、この5人でずっといられると思ってた。」
まなみ「わたしも。」
かなこ「でも、いつかはここから出て行かなきゃいけない時が来るんだよね。」
あきら「いつまでもこのままじゃいられない、ってことか。」
り ほ「だからさ、行こうよ。ね?」
まなみ「行きたいけど......お母さんに迷惑かけるのはな。」
り ほ「まなみは考えすぎだよ。大丈夫、言ってみればいいよ。」
まなみ「そんなもん?」
り ほ「そんなもん。言った者勝ちででしょ。」
かなこ「反対されたらどうしようとか、そう言う事考えたりしちゃわない?」
り ほ「んー......考えない。」
かなこ「考えないの?」
り ほ「うん。考えた所で無駄だし。」
全 員「無駄?」
り ほ「うん。だって、大人なんて子どもの我が儘を、はいそうですかって素直に受け止めてくれる様な生きものじゃないでしょ。」
全 員「確かに。」
かなこ「大人は大抵、子どもには反対から入るよね。」
り ほ「そうそう。」
あきら「賛成してくれたっていいじゃない。」
かなこ「大人にも、大人の事情があるんだよ、きっと。」
みずき「例え、大人の事情ってのがあったとしても、俺らの意見も聞かずに初っ端から反対するのは違うんじゃないか。」
かなこ「それは......」
みずき「そもそもさ、大人の事情って何だよ。」
あきら「子どもにされちゃ都合悪い何かがあるとか。」
みずき「そんなん知らねえよ。大人の勝手だろ。」
り ほ「大人なんてそう言う生き物なんだよ。」
まなみ「ねえ、りほ、それどういう事。」
り ほ「大人は、子どもを試してるんだよ。」
全 員「は?」
まなみ「りほ、話の流れが全然見えないんだけど。」
り ほ「お姉ちゃんが言ってたんだけどね、大人が反対から入るのは子どもを試すためなんだって。」
みずき「だから?」
り ほ「大人に期待するだけ無駄ってこと。」
まなみ「つまり?」
り ほ「つまり......」
あきら「定期テストみたいね。」
り ほ「そう、それ!そう言う事!」
みずき「なんで大人は俺らを試すんだろうな。」
まなみ「大人になる、一歩手前に居るから、じゃないかな。」
みずき「大人になる一歩手前?」
まなみ「うん。先生も親もよく言うでしょ。『君たちはもう子どもじゃないんだから』って。」
みずき「あ、それ俺も言われた。」
かなこ「わたしも。」
り ほ「えー、わたしお父さんに『お前はまだ子どもなんだから!』って言われたばっかりなんだけど。」
あきら「わたしもおばさんに言われた。『あなたはまだ子どもなんだから』って。」
り ほ「大人だとか子どもだとか言って、結局どっちなんだろうね。」
みずき「大人の都合がいい様に俺らは仕分けされてるだけじゃん。」
まなみ「もう子どもじゃないってことは子どもじゃないんだよね?」
二 人「うん。」(みずき・かなこ)
まなみ「でも、まだ子どもでしょって言われるんだよね。」
二 人「うん。」(りほ・あきら)
まなみ「......分からないね。」
みずき「なんて言うか、俺らって中途半端な位置に居るよな。」
全 員「中途半端?」
みずき「大人でもなければ、子どもでもない。」
り ほ「ある意味、どっちにもなれるけどね。」
かなこ「でも、それはどっちにもなれないってことじゃない?」
まなみ「難しい事言わないで。頭がパンクしちゃいそう。」
あきら「......マージナル・マン」
まなみ「え?」
あきら「それって、マージナル・マンだよ。」
まなみ「あきら、急にどうしちゃったの。」
あきら「前、授業でそういうのしたなって......あれ、教科書。」
り ほ「わたしの使う?」
まなみ「りほ、また置き勉してるんでしょ。」
り ほ「今回は大目に見て。」
まなみ「もぉー。」
あきら「ありがとう。確かここら辺、ほら、あった。」

   マージナル・マンが書いてあるページを開く
   全員そこを覗き込む

かなこ「マージナル・マン、周辺人ともいう。複数の集団や文化の......」
り ほ「堅苦しいのはいいよ。」
あきら「大事なのはその後。」
まなみ「ドイツの心理学者レヴィンは、子どもで大人でもない青年もそうであるという......」
みずき「子どもでも大人でもない......」
かなこ「これって、今の私たちのためにある様な言葉じゃない。」
り ほ「ほんとそれな。」
あきら「あ、こんな事も書いてるよ。」
かなこ「二つの集団、大人と子供に所属していながら、どちらにも所属しない不安定な状態......」
みずき「不安定......。」
かなこ「こんな昔の人たちもさ、わたし達と同じように悩んできたのかな。」
り ほ「同じように?」
かなこ「ほら、大人の都合に振り回された若者がいたのかなって。」
あきら「居たのかもね。じゃないとこんな定義つくらないでしょ。」
全 員「確かに。」
り ほ「じゃあさ、わたし達はどっちにもいていいってこと?」
まなみ「どっちにも?」
り ほ「大人ってエリアと、子どもってエリア。どっちにも所属してないならさ、どっちに所属しても良くない?」
みずき「それだよ!」
まなみ「どれよ。」
みずき「だからさ、大人が口うるさくあーだこーだ言うなら、俺らもそれを使っちゃえばいいんだよ。」
まなみ「......どういうこと。」
みずき「つまり、俺らも俺らの立場を利用して、」
あきら「都合よくどっちかになればいいってこと?」
みずき「そゆこと。」
り ほ「すごい、みずき天才だったの?」
みずき「平成のアインシュタインとは俺の事よ。」
まなみ「でも、それじゃあ大人としてることかわんないじゃない。」
みずき「だから、これは戦いなんだよ。」
まなみ「戦い?」
みずき「そう、名付けて『マージナル・マン対決』!」
まなみ「......ださくない?」
みずき「俺にセンスを求めるのは、ナンセンスだぜ。」
全 員「......」
り ほ「で、作戦は?」
みずき「......え。」
り ほ「だから、作戦は?」
みずき「......は?」
り ほ「対決なんでしょ。対決ってことは誰かと勝負するんでしょ?」
まなみ「確かに。」
あきら「まあ、話の流れからして敵は明らかだけどね。」
り ほ「誰!?」
あきら「大人、今わたし達が戦うべき相手は大人、でしょ、みずき?」
みずき「分かってるじゃん。」
り ほ「何それ、楽しそう。」
まなみ「大人と勝負するの?」
三 人「うん。」
まなみ「......やめとかない?」
みずき「何だよ、ビビってんのか?」
まなみ「違うよ、わたしは、ただ......」
り ほ「ただ?」
まなみ「とにかく、やめとこ。ねえ、やめとこうよ。」
あきら「わたし達の自由がかかってるんだよ。」
かなこ「自由。」
あきら「そう。ここで一発大人をぎゃふんと言わせられれば、」
かなこ「やりたい事も自由にできる。」
あきら「そゆこと。」
作品名:マージナル・マン 作家名:馬場ふたば