一卵性双生児の片割れが片割れに嫌悪感を抱いている話。
変わったこと
身内との、これまでの比じゃない争いは、お互いにとって良いことは無い。同じ屋根の下で暮らしている親や兄弟も、普段は口出しをしないとはいえ、良い気はしないだろう。
デメリットばかりにも思えるが、唯一それがきっかけで、私が変わったことがある。家事の手伝いだ。
娘達は、家事の手伝いに積極的ではなかった。頼まれたら、何分かしてから重い腰をやっとあげる。私がスッとやれるものは、米とぎくらいだけだった。
それが、例の件があってから、私の意識が変わっていた。
変わった、と表現すべきかは分からない。だが、その時に、よく見ることが多い洗い物の溜まった台所を見て「あ、溜まってるな」と思い、自然と片づけていた。その後に、母は仕事から帰宅し、褒められたことを覚えている。
変化のきっかけは皿洗いだとしても、その原因が母からの褒め言葉だった。
特別、虐待などされた覚えはないし、寧ろ母親の方から何かと娘に構いに行く家庭だ。「お父さんはデレがない。ツンツンだ」とたまに娘達がからかう、無愛想な父からも充分な愛情を感じていた。一般家庭より裕福ではないにしても、複雑な所は何一つも無かった。単純に褒められたことが嬉しかった。
驚くべきことは、それが今でも、約数ヶ月ほど続いているということだ。
私は比較的飽きやすい性格をしている。どうせ三日坊主だろうと思っていたものだから、自分でも驚いている。
恐らく、私は差を見せつけたかったのだと思う。双子のテンプレートか分からないが、何かと比較されたり(といっても善し悪しではなく、間違い探しの感覚だが)、同一にされるのは好ましくは感じていない。私はアイツと違う、と無意識に思ったからなのかもしれないし、実際に同じにされると反吐が出そうになる。
これがいつまで続くかは神のみぞ知る、が悪いことでは無いので長期に渡って継続していきたい。
作品名:一卵性双生児の片割れが片割れに嫌悪感を抱いている話。 作家名:二分の一