「歴女先生教えて~」 第五話
「いい質問ね高木くん。まず私たちが考えないといけないことは、歴史を学ぶ基礎になっている文献の真贋よ。古事記や日本書紀そして続日本紀(しょくにほんぎ)はだれがいつ何のために編纂したのかということを見逃してはダメなの」
「嘘が書いてあると言う事なんですか?」
「嘘とまで言わなくても、人物を取り違えていたり、年号を間違っていたり、その時の天皇家にとって都合の悪いことは省略または書き換えが行われていると言う事よ」
「どうしてそのようなことが起こったのですか?」
「そうね、まずね膨大な資料が必要な編纂事業だったから、いろんな人が手分けして書いていたの。そして漢文で書かれているのでその言葉の意味を取り違えて翻訳されたりしているから厄介なのよね。当初に書かれていた内容が後から修正されたりもしていたの。だから前後関係をしっかりと調べて後の世にかかれた扶桑略記とかも参考にして検証する必要があるの」
「太平洋戦争が終わるまで、日本人はその記紀(古事記と日本書紀)を信じていたのですよね?」
「うん、高木くんの言うとおりね。それまでにも疑問をぶつけていた人は居たし、江戸時代でもすでにおかしいと指摘していた研究者もいた。天皇が日本の中心にいた時代では記紀の間違いは糺せなかった。そして天皇家同士の争いの壬申の乱も教育で教えることはしなかったの」
「教えられてきた歴史には偏見が多いと言う事なんですね。真実はどうだったのですか?」
「高木くん、真実は一つじゃないのよ。解るかな言っている意味が?」
「いえ、よく解りません」
「では、少し前までは縄文時代の人は鉄器を使っていなかったと言われていたけど、遺跡から鉄器が発見されて実はすでに伝わっていたと解釈されたの。つまり新しい発見によって史実は変わってゆくと言う事なの。だから真実は一つじゃなく私たちは残されている文献と遺跡などから予測する必要があるの。その予測が新しい発見によって覆されたとしても、それは仕方のないことだから、改めればいいことなのよね」
「大化の改新について言えば、蘇我入鹿は悪者ではなく、中大兄皇子の方が悪者だったということですか?」
「う~ん、歴史は勝ったもの、つまり勝者側から書き換えられるから真実は封印され、抹消されているのよね。私はこの政変は鎌足が計画して中大兄を誘ったと思っているの。蘇我氏に代わって天皇家に深く入り込んで政治の中枢を握りたいとの野望があったと考えるわ。どんなに頑張っても自分は天皇にはなれないから、親しく出来る時期天皇を取り込んで、外戚になれば、つまり娘を嫁がせればその子供は父親の思う通りになるからね」
「先生、鎌足は自分の欲のために入鹿をだまし討ちにしたということになるのですね」
「つまりはそういうことが真実に近いと考えるわ」
加藤は美穂が教科書を手にしながら教壇から下りて自分の近くに来た時に、しっかりと細い足首と、タイトスカートでくびれたウェストと、意外な胸の大きさを確認して、不謹慎ながら勃起していた。
歴史の授業どころではなかったのだろう。一切の質問に答えることはしなかった。いや、出来なかった。それはやらしいことを想像していたからだろう。
作品名:「歴女先生教えて~」 第五話 作家名:てっしゅう