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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「歴女先生教えて~」 第四話

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「そういうことになるわね渡辺くん。薩摩藩にしても長州藩にしても土佐藩でも藩主クラスは公武合体に協力的だった。郷士と言われる低い身分でかつ頭の優れた連中が、公家の同じような立場の三条や岩倉をそそのかして背後に居る天皇を揺さぶったともいえるわ」

「明治政府になって廃藩置県をして、維新に協力した旧大名は騙されたと思ったでしょうね。自分たちが一般人になるわけですから」

「渡辺くんはいいところを見ているわね。一応爵位は与えているけど実質政治の表舞台には立てなくなっていた。土佐の山内容堂(山内豊信=やまのうちとよしげ)なんかは明治になって酒と女に溺れてしまっていたらしい。この人キリシタンだったけどね」

「先生、キリシタンといえば、明治政府は廃仏毀釈でしたよね?」

「西欧の文化が入ってきて、天皇家も仏教から密かにキリスト教に影響されるようになったの。アメリカやイギリスなどに留学して戻ってくると、ほとんどが何らかのキリスト教に感化されていたらしいわ」

「武士から市民へ政治の主役が変わったように、宗教も儒教や仏教からキリスト教へ移っていったのでしょうか?」

「一時的な流行にはなったみたいだけど、最終的には多神教国家だったから植民地化された国家がキリスト教に変わってしまったような影響までは受けなかったの。日本がある意味救われたことは柔軟な姿勢であらゆる文化と宗教を受容出来た環境にあったのかも知れないと考えるわ」

ここで終業のベルが鳴った。

「では今日はここまでよ。次回は教科書から重要な部分を学習しましょう」

美穂はちらっと加藤の顔を見て、振り返り教室を出て行った。
放課後帰宅時間になって正門を出ると加藤が立って待っていた。

「あら、加藤くん、どうしたの?」

「先生、今度の日曜日少し時間空いていませんか?」

「日曜日?別に用事は無いけど何?車のこと?」

「親父に話したら、いい車があるから先生に紹介してみたらどうだって言われた。中古車なんだけどあまり乗っていなくてほぼ新車みたいだって言ってた。車種言ってわかる?」

「そうなの。気が早いのね。せっかくの好意だから伺うわ。そう伝えて」

「うん、じゃあ日曜日に待っているよ。時間分かったら教えてください」

「はい、金曜日に言います」

加藤は走って帰って行った。
美穂は一緒に歩いて帰ればいいのにと感じた。

「これっていけないこと?男子生徒と仲良く歩くことは?」

自分にそう尋ねてくすっと笑えた。