「歴女先生教えて~」 第四話
美穂は自分が教科書に書いてある史実とは別にいろんな歴史学者や作家などの幕末・明治維新の研究を調べていた。
真実とは必ずしも新聞や教科書などに書かれてあることだけではないということを学んでいた。
「皆さんは徳川幕府の悪いところとは何だと思っていますか?」
美穂は基本を確認したいと思った。
「先生、それは武士が偉そうにして農民からコメを搾取して自分たちは仕事をしていなかったからです」
「なるほど、浅野くんだったわよね。本当にそうだったのかしら?」
「違うんですか?」
「士農工商という言葉を知っている?」
「身分階級のことですね。武士が一番上で次が農民、そして職工、最後が商人だと思います」
「そうね。江戸時代までは農民は大切にされていたの。理由はお金の価値がコメに換算される貨幣経済だったからなの。つまりね採れた米を換金して幕府や地方大名の財政にしていたから、その元となる働き手の農民をいじめるなんて言うことはしなかったと思うわ」
「明治になって米から貿易や商工業へと貨幣経済は切り替わりましたね。徳川幕府は何故そのようにしなかったのでしょう?」
「徳川幕府は米経済にこだわっていたのよね。その最大の理由は儒教で言う商業は卑しいものとされていて、自分たち武士が行う事ではないとの考え方があったの。多くの武士は朱子学という儒教の一派の考え方を身に着けていたから、汗水流さずに金儲けをするなどと言う行為から資金を得たいとは考えなかったのよね。それに引き換え地方の大名たちは米以外に商工業を盛んにし、薩摩や長州なんかは密貿易などで資金をため込んでいたの。
そこにはもはや武士とは呼べない下級の侍の恰好をした知恵者が幅を利かせるように変わっていたの。
つまり、西郷や桂それに大久保たちのことよ」
「先生!それは構図的には関が原で敗れた西軍側が東軍の将徳川に復讐する様相に思えますが、それゆえに公武合体などは許せないと言う事だったのでしょうか?」
「高木くんはさすがね。視点が鋭いわ」
「こいつね、頭いいのに女に弱いんです、ハハハ~」
「加藤くん、そういうこと言うんじゃありません。今は歴史の授業中です」
「バ~カ、怒られやがって」
「高木くんもやり返す必要はないのよ。せっかく褒めたのに取り消しね」
「お前たち真面目にしろよ」
委員の渡辺が起立して高木と加藤の方を見ながらそう言った。
「ありがとう、渡辺くん。では続きを話します。結論から言うと薩摩はそれほどでも無かったけど、長州は禁門守護から追放され、七卿落ちといわれる連座して追放された下級の公家たちと国元へ引き上げてから、天皇家からは朝敵とされ徳川家から追討の兵を差し向けられ、特にその原因となった一つに会津藩の新選組などの暴挙による恨みも重なって幕府憎しとなっていたの。戊辰(ぼしん)戦争の後会津藩を徹底的に許さなかったことはその時の恨みからだと言われているわ」
「そんな江戸時代の古い考え方が自分たちと藩を縛っていて抜け出せなかったということですか?」
真実とは必ずしも新聞や教科書などに書かれてあることだけではないということを学んでいた。
「皆さんは徳川幕府の悪いところとは何だと思っていますか?」
美穂は基本を確認したいと思った。
「先生、それは武士が偉そうにして農民からコメを搾取して自分たちは仕事をしていなかったからです」
「なるほど、浅野くんだったわよね。本当にそうだったのかしら?」
「違うんですか?」
「士農工商という言葉を知っている?」
「身分階級のことですね。武士が一番上で次が農民、そして職工、最後が商人だと思います」
「そうね。江戸時代までは農民は大切にされていたの。理由はお金の価値がコメに換算される貨幣経済だったからなの。つまりね採れた米を換金して幕府や地方大名の財政にしていたから、その元となる働き手の農民をいじめるなんて言うことはしなかったと思うわ」
「明治になって米から貿易や商工業へと貨幣経済は切り替わりましたね。徳川幕府は何故そのようにしなかったのでしょう?」
「徳川幕府は米経済にこだわっていたのよね。その最大の理由は儒教で言う商業は卑しいものとされていて、自分たち武士が行う事ではないとの考え方があったの。多くの武士は朱子学という儒教の一派の考え方を身に着けていたから、汗水流さずに金儲けをするなどと言う行為から資金を得たいとは考えなかったのよね。それに引き換え地方の大名たちは米以外に商工業を盛んにし、薩摩や長州なんかは密貿易などで資金をため込んでいたの。
そこにはもはや武士とは呼べない下級の侍の恰好をした知恵者が幅を利かせるように変わっていたの。
つまり、西郷や桂それに大久保たちのことよ」
「先生!それは構図的には関が原で敗れた西軍側が東軍の将徳川に復讐する様相に思えますが、それゆえに公武合体などは許せないと言う事だったのでしょうか?」
「高木くんはさすがね。視点が鋭いわ」
「こいつね、頭いいのに女に弱いんです、ハハハ~」
「加藤くん、そういうこと言うんじゃありません。今は歴史の授業中です」
「バ~カ、怒られやがって」
「高木くんもやり返す必要はないのよ。せっかく褒めたのに取り消しね」
「お前たち真面目にしろよ」
委員の渡辺が起立して高木と加藤の方を見ながらそう言った。
「ありがとう、渡辺くん。では続きを話します。結論から言うと薩摩はそれほどでも無かったけど、長州は禁門守護から追放され、七卿落ちといわれる連座して追放された下級の公家たちと国元へ引き上げてから、天皇家からは朝敵とされ徳川家から追討の兵を差し向けられ、特にその原因となった一つに会津藩の新選組などの暴挙による恨みも重なって幕府憎しとなっていたの。戊辰(ぼしん)戦争の後会津藩を徹底的に許さなかったことはその時の恨みからだと言われているわ」
「そんな江戸時代の古い考え方が自分たちと藩を縛っていて抜け出せなかったということですか?」
作品名:「歴女先生教えて~」 第四話 作家名:てっしゅう