映画 戦国生徒会
第32章: 文化祭の上映会
秋深まるこの頃、桜の葉が黄色く変化し始めたものの、まだまだ暖かい日が続いている。制服は冬服に変わり、スクリーンに映る生徒の夏服に、少し違和感を感じるくらいにはなっていた。
映画本編はすべて完成し、最後にNG集の編集が、みんなで楽しく行われていた。NGシーンの他に、ロケ中のスタッフのスナップ写真も盛り込まれる。その中には、先日の博之と千鶴の、交際宣言をした噴水バックのツーショット写真もあった。写真部の金城の腕前はさすがで、その1枚はとてもきれいに撮影されている。その他、外階段下倉庫の団らん風景、沖縄の修学旅行、性飢魔III(せいきまさん)ライブの主題歌熱唱シーン、合宿の花火、山頂までのダッシュ動画、そして御来光バックの集合写真から、オーバーラップした全員の「サルボボ」の集合写真で、映画は幕を閉じるのだ。
10月15日、文化祭当日、ついに上映会午前の部が開催される。
中川と近藤は、嬉しくって仕方なかった。当初の予想は数十人ほどの上映会の企画だったのに、定員150人席の小講堂は、ほぼ満席だった。
津田が司会をして、監督の中川とクマ先生が、まず舞台挨拶に立った。そして、スタッフが一人ずつ紹介され、主演の博之と千鶴は、撮影の苦労話をさせられた。
(中川豊) 「木田君(博之)は、本当に台詞が下手でしたよね」
(津田柚華) 「台詞は覚えてるのに、笑わそうとしてしてるのかと疑ったわ」
(木田博之) 「でも、最終のアフレコの時には、ちゃんと出来てましたよね、俺」
(中川豊) 「いやー。それは皆さんに観てもらって、確かめてもらいましょうか」
(クマ先生) 「佐藤はさすがに、画面の中でも魅力が際立ってたよね。プロの女優になれるんじゃないかと思うくらい。うちの劇団『地蔵倶楽部』に入りませんか?」
(中川豊) 「それは全員納得ですね。おかげで楽しく映画作りが出来ましたから」
千鶴は照れて、『イヤイヤ、とんでもない』という感じで手を横に振った。
(中川豊) 「佐藤さん、木田君(博之)の相手役で、やりにくかったこととかありませんでしたか?」
(佐藤千鶴) 「そんなことなかったですよ。でも、初めの頃は、全然喋らない人だなって思ってました」
(津田柚華) 「それはかなり、佐藤さんを意識してたってことですね」
津田が博之にマイクを向けた。