映画 戦国生徒会
第14章: アルプス一万尺
翌朝、まだ暗いうちに旅館をチェックアウト。全員がスキー場にあるバスターミナルに移動した。そこからは、専用バスでしか、登山道路には入れない。
車内で、旅館で用意してもらったお弁当を食べた後、登山部員の顔に男子スタッフの手で、ドウランを用いてオネエメイクが施された。他にも一般客が乗っていて、時間もないので簡単なメイクになったが、逆にマジなオカマ達のようにも見えた。
「どうしてメイクしてるの?」
と椋ノ木が聞いたが、男子はみんな笑えて仕方なかった。
「山男のプライドみたいだよ」
野崎が言って、大爆笑した。
乗鞍岳山頂近くのバスターミナルにバスが到着したのは、日の出の30分ほど前だった。真夏とは言え気温は10度以下。ここで映画スタッフと登山部は別れることになる。
みんなで『アルプス一万尺』の看板の前で記念撮影した後、登山部は乗鞍岳の最高峰「剣ヶ峰(3,026メートル)」を目指して歩き出した。彼らはすぐにドウランを落とすつもりだったろうが、それは拭いても、水で洗っても、あまり効果がない。油性のクレンジングクリームでないと落ちないのだった。
映画スタッフは、すぐ近くにある富士見岳山頂を目指した。ガイドブックにはバスターミナルから徒歩15分と記されているが、薄暗くてどれが富士見岳に続く登山道か分からない。他の登山客に聞いてそれを目指したが、もたもたしている間に、登っている途中で明るくなってきてしまい、日の出が始まりそうだ。
「いかん。みんな急げ」
スタッフは全員猛ダッシュで、岩が転がる急斜面を駆け登ったが、ここは『アルプス一万尺』と謳われた標高3000メートル近い高地。当然空気が薄く、10メートルも登ると息が切れて走れない。
「キッドと・・・はぁはぁ・・・カメラだけでも・・・先に行け!」
ちょっと太めの中川は諦め、その他のスタッフも立ち止まった。博之はアスリートの根性を見せ、鼻の穴を大きく開きながら必死で登った。近藤と桐谷がなぜかカメラで撮影しながら、なんとか博之の後を追った。