映画 戦国生徒会
第12章: 合宿スタート
8月2日からの一泊二日の乗鞍高原ロケが始まった。ロケというのは建前で、映画スタッフのほとんどが旅行気分で参加した。
「ロケバス付きとは豪勢だな」
一番嬉しそうなのはクマ先生だった。
早朝、学校の校門に登山部から6名、映画スタッフから11名が集まり、学校のマイクロバスに乗り込んだ。
バスは高速道路を走る間、カラオケ大会になった。学校バスなのでカラオケ設備はなかったが、スマホで音楽を再生しながら、車内マイクで歌うのだった。千鶴は特によく歌った。隣にはクラスメイトの椋ノ木が座って、全曲のうち半分は二人で歌っていた。
博之は一人で座っていて、窓の景色を眺めながら、(近ちゃんは佐藤(千鶴)と一緒に座らなかったな。マイクロバスの座席が小さいからなのかな?)というような考え事をしていた。
昼前に高山市内に入り、高山ラーメンを食べた後、市内を歩いて観光した。映画スタッフは、クマ先生が引率の遠足のようにぞろぞろ歩くと、登山部もそれに続いた。写真部の金城と桐谷は、大きなカメラでみんなの写真を撮っている。
スタッフ全員でお揃いの「サルボボ(地域のマスコットキャラクター)」のストラップを購入しようということになり、それぞれ自分の好きな色を買うことにした。
「福ちゃんと山崎の分を、俺と近ちゃんで買うから、龍子(川崎恵美莉)の分をお土産に買ってやれよ」
と中川が博之に言った。
「恵美莉は何色がいいかな?」と独り言を言いながら選んでいると、
「衣装のジャージと同じ青が合ってると思う」
と千鶴が言った。その千鶴は黒を持っていた。
「え? お前、黒?」
「悪い? 黒子みたいでかわいい」
と言って笑った。
「キッド君は金色で決まり」
「バカみたいじゃないか」
「高級そうよ。それだけ50円高いし」
博之はその他のスタッフからも調子に乗せられ、恵美莉には青色、自分は金色を買った。