年賀 非道なブティック店長
都内のどこかにあるブティックに、櫻澤音々という若い店長が居ました。彼女は、顔も外見もモデルと間違えられるほどに美しいのですが、態度が高飛車なうえ、他人、特に弱い立場におかれている人々には、少しも関心を持とうとしませんでした。
例えば、夏も終わりに近付いたある日、彼女の部下の小柴亮子が、こんな話をしたときのことです。
「櫻澤店長、先日の台風で、田舎のほうで高齢者施設がすごい被害にあって、そこの人たちがたくさん死んだそうです。かわいそうですね」
櫻澤は、面倒くさそうにため息をついて、言いました。
「小柴さん、そういう『死』=『かわいそう』っていう構図、気持ち悪いんだけど」
店長の発言に、小柴さんは顔をこわばらせました。
「何でですか。逃げようとしても逃げられずに死んでいったんですよ?」
「そうは言ってもね、私と彼らには何の関係もないし、よその人が哀れに思っても、彼らが生き返るわけじゃないでしょう?」
小柴さんの背筋は、僅かに寒くなりました。櫻澤は、自分に酔っているかのように話を続けます。
「まあ、言葉をかけなきゃいけないなら、『人生の卒業おめでとう』、そんなもんかしら」
小柴さんは、この高飛車で冷酷な店長の態度が理解できず、とうとう顔をそむけてしまいました。
「そんな無駄話してるくらいなら、接客の勉強でもしたらどう?」
櫻澤がなおも冷たい言葉を吐いていると、ブティックに裕福そうな中年の女性客が入ってきました。
「あ、いらっしゃいませぇ」
さっきまでの高飛車な態度とはうって変わり、櫻澤は女性客に向かって上品そうな笑みを浮かべ、深々と頭を下げると、彼女に商品の案内を始めました。そのあまりの変わりように、小柴さんは呆れて言葉が出ませんでした。
そんな櫻澤は、およそ4カ月後に、生涯忘れられない思い出をつくろうとは、想像さえしなかったのです…。
例えば、夏も終わりに近付いたある日、彼女の部下の小柴亮子が、こんな話をしたときのことです。
「櫻澤店長、先日の台風で、田舎のほうで高齢者施設がすごい被害にあって、そこの人たちがたくさん死んだそうです。かわいそうですね」
櫻澤は、面倒くさそうにため息をついて、言いました。
「小柴さん、そういう『死』=『かわいそう』っていう構図、気持ち悪いんだけど」
店長の発言に、小柴さんは顔をこわばらせました。
「何でですか。逃げようとしても逃げられずに死んでいったんですよ?」
「そうは言ってもね、私と彼らには何の関係もないし、よその人が哀れに思っても、彼らが生き返るわけじゃないでしょう?」
小柴さんの背筋は、僅かに寒くなりました。櫻澤は、自分に酔っているかのように話を続けます。
「まあ、言葉をかけなきゃいけないなら、『人生の卒業おめでとう』、そんなもんかしら」
小柴さんは、この高飛車で冷酷な店長の態度が理解できず、とうとう顔をそむけてしまいました。
「そんな無駄話してるくらいなら、接客の勉強でもしたらどう?」
櫻澤がなおも冷たい言葉を吐いていると、ブティックに裕福そうな中年の女性客が入ってきました。
「あ、いらっしゃいませぇ」
さっきまでの高飛車な態度とはうって変わり、櫻澤は女性客に向かって上品そうな笑みを浮かべ、深々と頭を下げると、彼女に商品の案内を始めました。そのあまりの変わりように、小柴さんは呆れて言葉が出ませんでした。
そんな櫻澤は、およそ4カ月後に、生涯忘れられない思い出をつくろうとは、想像さえしなかったのです…。
作品名:年賀 非道なブティック店長 作家名:藍城 舞美