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荏田みつぎ
荏田みつぎ
novelistID. 48090
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それから(それからの続きの続きの続き)

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それまでの彼は、支給された作業服など着ないで、鳶さんの着ている様な、所謂、自前のニッカポッカを着ていた。
「今日は、もう帰れ。明日からこの作業服で来いよ。時間は、7時。お前、明日から、俺のグループだ。分かったな・・?」
俺は、必要最低限の事だけ伝え、また資材置き場の整理に戻った。

彼が、〇〇で働き続けるかどうか、それは、俺の決める事ではない。
が、俺は、翌朝、7時10分まで待ち、それまでに出社しなければ、おさらば。二度と関わりを持たないと、決めていた。

6時半、篤志は、来た。
その日から、Cさんが、そうした様に、俺は、彼を始終傍に置いた。そして、彼と一緒に重い物を運び、Cさんから教わった知識を、機会有る度に伝える・・
勉強などというものに、とんと縁を持たなかった彼は、常識的な漢字さえまともに読めない。俺は、朝のミーティングで、彼に書記をさせる。
「いいか、平かななんかで書くんじゃないぞ。」
「・・まったく、そんな字も知らないのか・・」
「おい! 偏と旁が逆だ! ・・どうしようもないな・・・」
などと、信じられない内容の言葉を吐かねばならない俺。
だが、何しろ仕事を始める前の事。その時の雰囲気が、沈んでしまってはどうにもならないから、まあ、其処は、それなりに面白おかしく・・
すると、
「ああ、その漢字は、そう書くんか・・」
とか言う者が、一人、二人居て、それが切っ掛けで、篤志は、徐々にグループに溶け込み始めた。
そうなると、
「此処は、どうするんですか?」
とか、
「今のうちに、■■を準備しときます(しておきます)。」
などと、日を追う毎に、仕事に意欲を見せる篤志。
やがて、
「さんばんさん、最近、得意の『お前、バカか・・』が、出ませんね。」
などと、厚かましくも、俺を揶揄う様になる。

時は流れて、彼も人並みに読み書きが出来る様になった。
そして、彼の親友である良和と競い、二人は、今年、二級土木施工管理技士の試験を受けた。
回答の内容などを聞くと、どうやら二人とも合格圏内に居るのは、明らかだ。

過日、篤志が、母と共に俺の家に来た。
突然の来訪だったが、彼の母親から
「こんな子を・・、色々ありがとう・・」
と、シュークリームの入った大きな箱を頂き、
「・・俺、甘いものに目が無いんです。こちらこそ、ありがとうございます。」
と応え、
「もう、ほんとに・・ 少しは、真面目にお相手してよ・・」
と、多恵から顰蹙を買ってしまった。

俺のやり方・生き方に、
「分からない・・」
と言う者もいる。
だけど、好いさ。
所詮、人は、その人生に於いて、生まれた環境とか、育った経緯とか、理解者が居たとか居なかったなどで、その生き方が大きく変わる。
俺は、俺と同じ匂いのする者を、放っては通れない。
あるいは、俺が間違っているのかも知れないが、最近、世間が・・おかしい と感じる事が頻繁だ。
訳も無く人の命を奪う。切り刻む・・
何処かの映画の様に、太陽が眩しかったから・・命を奪ったのか?
いや、そうじゃない。世の中が、人に冷た過ぎるんだ。だから なのだ。
だから、俺は、世間の無関心などに押し潰されそうな奴を・・、嘗ての俺が、そうであった様な奴を、
「そうかい・・ それなら、お好きにどうぞ・・」
などと、無関心を装う事など出来ない。
俺などに出来るかどうか・・、そんな事、やってみなけりゃ、分からない。というよりも、理屈抜きで、気付いたら、なんだか、やっちまってるんだよな。
ただ、それだけさ・・