それから(それからの続きの続き)
そして、あの〇〇の社長、一体、何を考えて、俺なんかを欲しいといったのか・・などと考えるに従って、俺の短気が、ムクムクと・・。
(まったく、当の本人を蚊帳の外に置いて、この国得意の密談とか根回しなどしやがって・・。事と次第では、AB建設と○○の両方からおさらばして、またポンとフィリピンに帰ってやる・・)
翌日、現場に出掛けようとする俺は、一人だけ社長に呼び止められた。
そして、
「現場へ行かんでもええけん、これから〇〇へ行って、其処の社長さんと話をしてくれんか・・。わしが、ちょっと前に、あんたに話した件で行って貰うんじゃけど、最終的な返事は、あんた自身ですりゃぁ(すれば)ええけん・・」
と言う。
俺は、○○で働く様になるかどうかは別として、いずれにしても、AB建設で働く事はないと、昨晩のうちに決めていた。
その最大の理由は、容子さん。
このまま俺が、この会社に居続けるという事は、ある意味、彼女に来るかも知れない新しい幸せを阻む事になると思ったから。
俺は、○○を訪ねた。
現場で何時も顔を合わせていた専務が、相変わらずの柔和な表情で迎えてくれる。
「社長は、ちょっと遅れるけど、さんばんくんが来たら待って貰う様にと、さっき電話が有ったけん・・。こっちから呼んで、待って貰うのも失礼な話じゃけど・・」
「いや、構いませんから・・」
と、この会話だけで、俺は、俺が此処を訪ねた理由を、専務も知っているという事が、なんとなく分かった。
作品名:それから(それからの続きの続き) 作家名:荏田みつぎ