秋上がりの女
男は封筒を女に渡して、ロビーで別れた。別れ際、女は
「ありがとうございました」
と敬語を使ってほほ笑んだ。封筒には、10万円入っていた。
いつもの調子であっさりとあいさつしたが、急に切なくなってきて、後の男に会いたくなった。なんとなく、肌恋しい。あの男のものは、硬くて太いのがよい。とりわけ、奥へのあたりかたがいい。あの男が、ミルクのようなトロトロ汁は、初めてだといってくれたのが、なによりうれしい。自信が深まるではないか。娼婦のようなことをしてしまったが、今度会うときは、どうしたらよいのか不安になってしまう。
娼婦と言えば、朝の男ともうまくやっていかねばならない。二人の男は情報交換をするのだろう。しかし彼らが譲り合うわけではない。しょせん男の主導権争いであるから、傍観すればよい。1対2なのだから。二人とも、うまく付き合える自信がわいてきた。彼らの情報交換は怖くない、心配ないと女はつぶやいた。
ダブルスタンダードで行けばよい、まったく別々の人格をうまく構築して二正面作戦である、相手を振り回せばよいのだ。日曜日の使い分け、二重デートは成功した。二人には、からだがあっている、あっているから、とささやくのだ、ささやくだけで十分翻弄できる。うまく感情を組み立てるレッスンをしておこう。恋愛や性愛に後先はないから、と女は貴重な日曜日の体験をふりかえった。